王桜起源説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 09:48 UTC 版)
鎮海の桜に見られるように、韓国には日本統治中にソメイヨシノが導入されたが、韓国ではソメイヨシノの正体は韓国固有種の王桜(エイシュウザクラ)であるとする韓国起源説がしばしば主張される。そのため朝鮮語においても両者を区分せず、どちらも「왕벚나무(ワンボンナム)」と呼称されている。このため現在においても王桜の名所を作るという名目で韓国内でソメイヨシノの大量植樹が行われている。しかし上記の通り様々な遺伝子解析によってソメイヨシノの片親は日本固有種のオオシマザクラであり、ソメイヨシノと王桜は遺伝的に異なることが明らかにされている。2017年には改めて森林総合研究所(チーム長 勝木俊雄)と岡山理科大学の池谷祐幸がサクラの種間雑種について分類体系を整理し、韓国済州島の王桜(エイシュウザクラ)はエドヒガンとオオヤマザクラの種間雑種であり、ソメイヨシノと異なることを明らかにして、新たな王桜の学名(Cerasus × nudiflora (Koehne) T.Katsuki & Iketani)を確立させて、国際的な周知が行われた。 また、西洋のサクラの分類法では、オオシマザクラ・ヤマザクラ・オオヤマザクラ・カスミザクラの4種(species)は、種の下位分類である変種(variety)もしくは品種(form)であり、Prunus serrulataという同一種であるとする分類方法もあり、確かにこの4種は遺伝的に比較的近い存在である。そして韓国にはエドヒガン(済州島のみ)とオオヤマザクラとカスミザクラが自生している。このため、韓国でエドヒガンとオオヤマザクラもしくはカスミザクラが交雑したら、野生種の遺伝的多様性からソメイヨシノに類似した桜が生まれる可能性は有り得るが、この4種はDNA解析と形態学的にはっきりと区別でき、ソメイヨシノは伊豆諸島産の集団であるオオシマザクラが父親であることが確定しているため、仮に韓国にソメイヨシノに類似した桜が存在したとしても、それはソメイヨシノではない。 なお、王桜は韓国では韓国の固有種とされているが、現在の生物学では、独立した種(species)と見なされるためには、その種の中の個体に遺伝的多様性があり、個体が互いに交配して子孫を残すことができている一定規模の集団でなければならない。王桜は野生での個体数が野生種の集団としてはあまりにも少ないため、現在の生物学上の種の概念では独立した種とはいえず、あくまでも種間雑種である。 2022年に行われた調査によると、ソウルのサクラの名所である韓国国会と汝矣島周辺に植えられたサクラのうち9割以上が日本原産のソメイヨシノであり、韓国原産の王桜は1本も植えられていなかったことが判明した。 詳細は「韓国起源説の一覧#動植物」および「王桜」を参照
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