玉川中和事業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/03 19:33 UTC 版)
「玉川ダム (秋田県)」の記事における「玉川中和事業」の解説
玉川ダムの目的は前述の他、玉川酸性水中和処理施設と連携して行われる玉川の水質改善がある。 玉川は源流部に玉川温泉・新玉川温泉を有する。両温泉とも湯治場として多くの入浴客が訪れる観光地であるが、温泉の水素イオン濃度は源泉時点でpH 1.1と、あたかも胃液か塩酸が流れているような強酸性の水である。温泉から流出する強酸性の水は、渋黒川を経て玉川へ流入する。このため古くから「玉川毒水」と呼ばれ、魚介類は全く生息せず、水田に流入してイネの枯死を招き、久保田藩佐竹氏の時代から問題となり度々の対策が計られていた。だがいずれも成功せず、特に1940年(昭和15年)の田沢湖を利用した中和事業では逆に田沢湖が強酸性になり魚が全滅するという事態になった。 このため玉川ダム完成後の1993年(平成5年)より、「玉川酸性水中和処理事業」を建設省主体で実施した。これは既に実績のある「吾妻川酸性水中和処理事業」(品木ダム)を参考にしている。簡易的石灰石投入による直接中和は1972年(昭和47年)より東北電力の協力を得た秋田県により実施され、徐々に玉川の水質は改善されていたが、玉川ダムを利用して中和促進の向上を図り、下流の玉川頭首工(農林水産省東北農政局)地点で利水に適当な水質に調整する事を目的とした。 2004年(平成16年)時点では、玉川頭首工付近でpH 6.9、田沢湖でpH 5.8まで回復し、玉川の水質は改善されつつある。これによって、従来は不可能であった玉川流域の灌漑や秋田市などへの上水道・工業用水供給が可能になった。流域300年の悲願であった玉川毒水の解消が、玉川ダムによって実現したのである。ダムはともすれば環境破壊の権化として糾弾されるが、本件はダムによって河川環境の改善が成功した例である。
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