特殊関数とは? わかりやすく解説

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特殊関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/03 09:45 UTC 版)

特殊関数(とくしゅかんすう、: special functions)は、何らかの名前や記法が定着している関数であり、解析学関数解析学可積分系物理学、その他の応用分野でよく使われる関数であることが多い[1]

何が特殊関数であるかのはっきりした定義は存在しないが[1]、しばしば特殊関数として扱われるものには、ガンマ関数ベータ関数エアリー関数ベッセル関数[2][3]ゼータ関数[4][5]楕円関数[6][7]ルジャンドル関数誤差関数超幾何関数[8][9][10] [11] [12] [13]直交多項式[14][15][16][17] (ラゲール多項式エルミート多項式が有名) などがある。一般には初等関数の対義語ではなく、ある関数が初等関数であって同時に特殊関数とされる場合もある。

特殊関数の一覧

特殊関数の多くは、微分方程式の解 (つまり可積分系の厳密解[18]) や初等関数積分 (誤差関数楕円積分[6][7]など) として現れる[1]。したがって、積分法の一覧[19]には特殊関数の記述がよく見られ、特殊関数の一覧[20]には最も重要な積分、すなわちその特殊関数の積分形式の表現が含まれていることが多い。

MATLAB[21]Maple[22]Mathematica[23]などの科学技術計算・数値解析のための言語は、多くの特殊関数を認識する。ただし、そのようなシステムが常に効率的なアルゴリズムで計算(評価)するとは限らない(特に複素平面の場合)。

特殊関数の記法

多くの場合、特殊関数には標準的記法があり、関数の名前、添え字(もしあれば)、括弧開き、引数列(コンマで区切る)、括弧閉じの順に記述する。このような記法を使うことで解釈が容易になり、曖昧さを排除できる。国際的に記法が確立している関数としては、sin、cos、exp、erf、erfc などがある[1][24]

場合によっては1つの特殊関数が複数の名前を持つこともある。自然対数には Log、log、ln などの記法があり、文脈によって使い分けられる[1][24]。例えば正接関数は Tan、tan、tg(ロシア語の書籍に多い[25]、例えばロシア語版wikipediaにある三角関数の記事を参照)などの記法がある。逆正接関数は atan、arctg、tan−1 などの記法がある。ベッセル関数Jn(x) と記されることが多いが[1][2][3]、besselj(n,x) や BesselJ[n,x] も同じ関数を意味している。

引数を示すのに添え字がよく使われる(整数が多い。例えば直交多項式[1][14][15][16][17]ベッセル関数[1][2][3]など)。まれにセミコロン (;) やバックスラッシュ (\) を分離文字として使うこともある。このような場合、論理的に解釈する際に曖昧さが生じ、混乱することがある。

肩文字はべき乗を示すだけでなく、関数の修飾を意味することがある。例えば、次のような例がある[1]

  • cos3(x) は (cos(x))3 を意味する。
  • cos2(x) は (cos(x))2 を意味するのが普通で、cos(cos(x)) と解釈することは滅多にない。
  • cos−1(x) は arccos(x) を意味するのが普通で、(cos(x))−1 という意味ではない。この例は上の2つの例とは異なるため、ここで混乱することが多い。

特殊関数の値の評価

特殊関数は変数が複素数である関数と見なせることが多い。それらは解析的であり、特異点カットで記述される[24]微分形式や積分形式が知られており、テイラー級数漸近展開を持つ[26]。さらに、他の特殊関数との関係が知られている場合には、より簡単な関数の組み合わせで表現できる場合がある。関数値の評価にはこれらの様々な表現を使う。最も単純な方法は、テイラー級数による級数展開を打ち切ったものを(展開の中心付近で)用いることであるが、展開された級数の収束が遅い場合がある[27]有理関数による近似式を使う場合もある。ある区間の中で多項式の値により関数値を近似する場合には打ち切られたテイラー展開を使うよりも最良近似理論に基づく近似式や打ち切られたチェビシェフ多項式展開を用いる方が良い。また有理関数近似についても最良有理近似式が使われることがある。

主な研究者

日本

海外

アメリカ合衆国

イギリス

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i 時弘哲治、工学における特殊関数、共立出版
  2. ^ a b c Watson, G. N. (1995). A treatise on the theory of Bessel functions. en:Cambridge university press.
  3. ^ a b c 平野鉄太郎. (1963). ベッセル関数入門, 日新出版.
  4. ^ 松本耕二. (2005). リーマンのゼータ関数. 朝倉書店.
  5. ^ 荒川恒男, 伊吹山知義, & 金子昌信. (2001). ベルヌーイ数とゼータ関数. 牧野書店.
  6. ^ a b 梅村浩. (2000). 楕円関数論: 楕円曲線解析学, 東京大学出版会.
  7. ^ a b 戸田盛和. (2001). 楕円関数入門, 日本評論社.
  8. ^ 原岡喜重. (2002). 超幾何関数. 朝倉書店.
  9. ^ 木村弘信: 超幾何関数入門——特殊関数への統一的視点からのアプローチ——, サイエンス社, 2007年.
  10. ^ Aomoto, K., Kita, M., Kohno, T., & Iohara, K. (2011). Theory of hypergeometric functions. Tokyo: Springer.
  11. ^ a b Exton, Harold (1976), Multiple hypergeometric functions and applications, Mathematics and its applications, Chichester: Ellis Horwood Ltd., ISBN 978-0-470-15190-7, MR 0422713, https://books.google.com/books?id=QwqoAAAAIAAJ 
  12. ^ a b Exton, Harold (1978), Handbook of hypergeometric integrals, Mathematics and its Applications, Chichester: Ellis Horwood Ltd., ISBN 978-0-85312-122-0, MR 0474684, https://books.google.com/books?id=fUHvAAAAMAAJ 
  13. ^ a b Exton, Harold (1983), q-hypergeometric functions and applications, Ellis Horwood Series: Mathematics and its Applications, Chichester: Ellis Horwood Ltd., ISBN 978-0-85312-491-7, MR 708496, https://books.google.com/books?id=3kHvAAAAMAAJ 
  14. ^ a b c Ismail, Mourad E. H. (2005). Classical and Quantum Orthogonal Polynomials in One Variable. Cambridge: en:Cambridge University Press. ISBN 0-521-78201-5. http://www.cambridge.org/us/catalogue/catalogue.asp?isbn=9780521782012 
  15. ^ a b 青本和彦: 直交多項式入門, 数学書房, 2013 年.
  16. ^ a b c Koekoek, R., & Swarttouw, R. F. (1996). The Askey-scheme of hypergeometric orthogonal polynomials and its ポータル カテゴリ


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