熱交換の基礎式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 17:14 UTC 版)
冷却塔の熱交換部では、エネルギ保存則より「水温低下により水が失う熱量」=「蒸発潜熱を含む熱交換により空気が得る熱量」、すなわち d Q = − L c w d t w = G d h {\displaystyle \mathrm {d} Q=-Lc_{\mathrm {w} }\mathrm {d} t_{\mathrm {w} }=G\mathrm {d} h} が成り立つ。ここで dQ :熱交換部で交換される熱量 (W) L :水量 (kg/s) cw :水の比熱 (J/(kg K)) tw :水温 (℃) G :空気量 (kg(DA)/s) h :湿り空気のエンタルピ (J/kg(DA)) である。またこの熱量はニュートンの冷却の法則、フィックの法則およびルイスの関係をもちいることで、境膜のエンタルピーと空気のエンタルピーの差に比例すると考えることができる。 d Q = K a ( h s ( t w ) − h ) d V {\displaystyle \mathrm {d} Q=Ka(h_{\mathrm {s} }(t_{\mathrm {w} })-h)\mathrm {d} V} ここで Ka :エンタルピ基準総容積熱伝達率。以下の K, a を個別に測定することが困難であるため、実用上はまとめて一つの量であるかのように見なされる。Ka の単位は、kcal/(m3hΔh)や、kW/(m3(kJ/kg(DA)))などと書かれる。おおよそ 7–35 kW/(m2 Δh) の値をとる。K :熱交換部のエンタルピ基準総括熱伝達率 (kg(DA)/(m2 s)) a :熱交換部の単位体積あたりの水と空気の接触面積 (m-1)。水滴の表面と水膜の表面から構成される。 V :熱交換部の体積 (m3) hs(tw ) :温度 tw における飽和蒸気のエンタルピ (J/kg(DA))。 である。 向流型の場合、dtw や dh などの微小量は流れの向きに沿った微分(dtw/dx 等)で置き換えられる。直交流型の場合は、水の流れの向きをx軸、空気の流れの向きをy軸などと置き、次式に書き換えられる。 − l c w ∂ t w ∂ x = g ∂ h ∂ y = K a ( h s ( t w ) − h ) {\displaystyle -lc_{\mathrm {w} }{\frac {\partial t_{\mathrm {w} }}{\partial x}}=g{\frac {\partial h}{\partial y}}=Ka(h_{\mathrm {s} }(t_{\mathrm {w} })-h)} ここで l, g は、単位断面積あたり流れる水量と空気量である。 Kaは水量と風量に依存し、向流型の場合には次の式で整理される。 K a ∝ ( L A ) m ( G A ) n {\displaystyle Ka\propto \left({\frac {L}{A}}\right)^{m}\left({\frac {G}{A}}\right)^{n}} ここで A は充填物の断面積、m, n は実験的に決まる定数である。また、Ka は水温による物性の変化にも依存すると言われ、次の無次元式で整理されることもある。 K a d e 2 c s λ a i r ∝ ( L A d e ν w a t e r ρ w a t e r ) ζ ( G A d e c s λ a i r ) η ( d e Z ) θ {\displaystyle {\frac {Ka{d_{\mathrm {e} }}^{2}c_{\mathrm {s} }}{\lambda _{\mathrm {air} }}}\propto \left({\frac {L}{A}}{\frac {d_{\mathrm {e} }}{\nu _{\mathrm {water} }\rho _{\mathrm {water} }}}\right)^{\zeta }\left({\frac {G}{A}}{\frac {d_{\mathrm {e} }c_{\mathrm {s} }}{\lambda _{\mathrm {air} }}}\right)^{\eta }\left({\frac {d_{\mathrm {e} }}{Z}}\right)^{\theta }} ここで ζ, η, θ :実験的に決まる定数 de:充填物の空気側水力学的相当直径 cs:飽和空気のエンタルピーを温度で微分したもの λ:熱伝導率 ρ:密度 ν :動粘度 A, Z:向流型の場合は充填物の断面積、高さ である。物性値は実用上便利なように平均水温における値などを用いる。
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