無症候性病変に関して
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:19 UTC 版)
高齢者の脳MRIには無症候性脳梗塞、無症候性大脳白質病変、拡大血管周囲腔があり、これらの判定にはかなりの混乱が認められている。日本脳ドックガイドライン2008での鑑別基準をまとめる。 ラクナ梗塞(空洞化なし)血管周囲腔大脳白質病変T1WI低信号 低信号 等 - 灰白質程度 T2WI明瞭な高信号 明瞭な高信号 淡い高信号 プロトン密度強調画像明瞭な高信号(+中央部が低信号) 低信号 淡い高信号 FLAIR画像等 - 高信号(中央部が低信号) 低信号 淡い高信号 大きさ≧3mm <3mm(大脳基底核下1/3では1cm超えることも) さまざま 形状不整形 整形、白質では線状 さまざま 好発部位基底核(上2/3)、白質、視床、脳幹 白質、海馬、中脳 大脳白質、橋底部 脳梗塞の画像経過からも示されているように画像のみで区別するのは難しいが、無症候性の場合はT1WIとFLAIRで低信号をしめすとラクナ梗塞や血管周囲腔の拡大とするのが一般的である。血管周囲腔とラクナ梗塞の鑑別は線状の形、位置のほかに、周囲のFLAIRで高信号を伴う場合はラクナ梗塞、伴わない場合は血管周囲腔を疑うのが一般的である。これはラクナ梗塞にて組織欠損、空洞化した後の所見と考えられている。内部信号はCSFと同様となるのが特徴的である。無症候性ラクナ梗塞という概念自体、書物により存在を認めない場合もあるが、画像診断学では存在する立場をとっている。 血管周囲腔 血管周囲腔(perivascular space,Virchow Robin腔)は穿通動脈や髄質動静脈の周囲に認められる。外側線条体動脈が好発部位であるため大脳基底核下1/3は好発部位となる。かつてはくも膜下腔の連続と考えられていたが2009年現在は軟膜内の空隙の連続と考えられている。若年成人でほとんど認められず高齢者や高血圧患者で拡大する。正常の加齢性変化であり脳卒中や他の神経症状の危険因子にはならない。基底核に拡大血管周囲腔が多数認められる場合をetat cribleと呼ぶこともある。 無症候性白質病変 脳ドックガイドライン2008では脳室周囲病変(PVH)と深部白質病変(DWMH)を分けて評価するのが一般的である。 Fazekas分類脳ドック学会 分類PVHgrade 0abcence なし、またはrimのみ grade Icap or pensil-thin lining capのような限局性病変 grade IIsmooth hallo 脳室周囲全域にやや厚く広がる病変 grade IIIirregular PVH extending into the deep wahite matter 深部白質まで及ぶ不規則な病変 grade IV 深部 - 皮質下白質にまで及ぶ広範な病変 DWMHgrade 0abcence なし grade 1punctate foci 3mm未満の点状病変、または拡大血管周囲腔 grade 2beginning confluence of foci 3mm以上の斑状で散在性の病変 grade 3large confluent area 境界不明瞭な融合傾向をしめす病変 grade 4 癒合して白質の大部分に広く分布する病変 病理学的にはPVHもDWMHも髄鞘の淡明化と血管周囲腔の開大とされている。PVHでは細胞外腔の拡大、DWMHでは微小梗塞を伴うことが多い。両者とも細動脈硬化に伴う慢性虚血性変化と考えられている。高度なものは無症候性脳梗塞と同様脳卒中の強力な危険因子であり、認知障害やうつ病の関連も強い。降圧療法の積極的適応が推奨されている。一方軽度の場合は病的な意義はないと考えられている。軽度のDWMHはラクナ梗塞との鑑別が問題となる。
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