無反動迫撃砲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 03:43 UTC 版)
アメリカ軍が第二次世界大戦中に開発したもので、端的に言えば前装式のクルップ式無反動砲である。 大きな仰角を付けた砲身に、分離式の発射薬を弾体に装着して砲口より砲弾を装填、砲弾の自重により砲身底部の撃針に雷管が接触して激発、発射されるという点では通常の迫撃砲と同一の構造だが、砲尾は閉鎖されておらず、ラバール・ノズルを持つ噴射口となっている。これにより、クルップ式の無反動砲と同じく発射薬の燃焼ガスを砲尾より噴射することで発射反動を相殺できるため、従来型の迫撃砲と異なり頑丈な底板を必要とせず、大口径の弾薬を使用するものでも反動を軽減・吸収させるための緩衝装置(駐退機)を省くことができるため、大口径ながら簡便な構造で軽量な迫撃砲とできる、というものであった。 アメリカにおいて、ドイツより鹵獲されたクルップ式無反動砲を分析することによりガス噴射式無反動砲の技術情報が得られると、特に太平洋戦線において至近距離での敵陣地・掩蔽壕攻撃に大火力の歩兵支援火器を必要としていたことから、既存の大口径迫撃砲(M2 107mm迫撃砲)の弾体を流用する形で“M4 4.2 inch mortar”として開発され、重機関銃用の三脚銃架に搭載できる軽量迫撃砲として完成した。M4の大きな特徴は、通常の迫撃砲のように墜発(砲口から砲弾を装填して砲身内に滑り落として発砲する方式)だけではなく、大きな仰角をつけない平射の状態であっても、弾頭に"rocket driver"と呼ばれる少量の増加装薬を装着し、砲口に弾薬を挿入した状態でこれに点火することにより砲尾側に砲弾を加速し、撃針に打突させることで墜発と同様に発砲できる、という点であった。 このような特殊な“無反動迫撃砲”が開発された理由は、当初アメリカで開発された無反動砲は通常の火砲に比べれば小型軽量であったものの、運用には車輪付きの砲架が必要で、太平洋戦線においてジャングルや湿地帯のような場所で用いるにはまだ重く嵩張りすぎるため、更なる小型軽量の大口径火砲が求められたためである。 M4迫撃砲は特に問題なく開発され、1944年には試作砲が完成、実用試験の結果も良好であったが、前述の“クロムスキット”方式の無反動砲や“バズーカ”(携行ロケット弾発射筒)が開発されると、それらは「小型軽量の大口径火砲」という要求に対して充分なものであったため、M4は試験運用のみで本格量産も配備もされずに終わった。以後もこの方式、もしくはこれに類似した方式の“無反動迫撃砲”が開発・運用された例はないが、アメリカが1950年代に開発した戦術核兵器である「デイビー・クロケット」は、やや特殊な方式ながら大仰角による曲射専門の無反動砲であり、資料によっては「核無反動迫撃砲」と表現されている。
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