溶存酸素と水質との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/13 03:51 UTC 版)
「溶存酸素量」の記事における「溶存酸素と水質との関係」の解説
野外の水域における溶存酸素量は、酸素の溶け込み量と消費量とによって決まる。それらはそれぞれ以下のような要素によって決定される。 酸素の溶け込みの原因は、大きくは大気の酸素が水面から溶け込むこと、および水中の植物の光合成による酸素の発生である。前者は水域の容積に対する水面の比率、および、風などに伴って起こる水面の撹乱の程度によって決定する。 酸素の消費は、主として水中の生物の呼吸によるもので、富栄養であれば多くなる。 水中に水草などの植物が繁茂していると、その光合成により、日中の太陽光線の下では高い溶存酸素量を示し、時には過飽和状態になっていることがある。場合によっては、水に溶け切れなくなった酸素が、気泡となって現れる。そのような水域では、夜になると逆に植物などの呼吸により、水中の酸素が消費され、貧酸素状態に陥ることもあり、そのような場合の溶存酸素量は著しく低下する。溶存酸素が無いと生息できない水生動物は数多いため、生物の多様性が失われることになる。(貧酸素水塊参照) 河川においては、上流域の渓流では水面が波立つために酸素のとけ込む量が多い分だけ、溶存酸素量が高くなりがちである。対して、中流、下流へと、流速が低く、有機物量が増えるため、溶存酸素量は低くなる傾向にある。 生活排水が流れ込むなどの要因で、有機物が多く流入した場合にも、溶存酸素量は低くなる。水中に生物が消費可能な有機物が多い場合、すなわち、生物化学的酸素要求量(BOD)が高い場合、微生物が大繁殖する。この微生物が酸素を消費するため、溶存酸素量は極めて低くなる。さらに微生物が嫌気的に有機物の分解を進行させれば、硫化水素等が発生し、いわゆるどぶの臭いがするようになる。このような状態では、生活できない水生動物が多数いる。 溶存酸素量は水質汚濁に係る環境基準が定められており、河川、湖沼、海域ともその水域の類型に応じた基準となっている。通常の水質汚濁項目(pHを除く)については、数値が低いほど水質が良いと言えるのに対して、溶存酸素量については数値が低いほど水質が悪いことになる。
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