減数分裂における染色体の挙動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 07:58 UTC 版)
「減数分裂」の記事における「減数分裂における染色体の挙動」の解説
二倍体細胞では、ある1本の染色体には、よく似たもう1本の染色体が存在する(図左上)。これらは互いによく似た(相同な)染色体であり、こういった関係にある2本の染色体を相同染色体(homologous chromosomes)と呼ぶ。相同染色体の一方は母方から、もう一方は父方から受け継ぐ。(注:常染色体ではそうであるが、例えばヒトなどの性染色体の2本の対についてはお互いに長さも違い遺伝子の内容もあまり似てはいない)。 減数分裂に先立って、細胞はDNA複製を行いDNAの量を倍化させる。その結果、元の染色体と同じ配列を持った2本の染色体が形成される(図左中)。これら同じ遺伝情報を持つ2本の染色体のペアは姉妹染色分体と呼ばれる(図左中の、同じ色の2本)。体細胞分裂では2倍になった染色体がそれぞれ娘細胞に受け継がれ、母細胞と同じになる(右上)。 減数第一分裂では2本の染色分体からなる相同染色体同士が対合し、4本の染色分体からなる二価染色体(bivalent chromosomes)を形成する(図左下)。その後、それぞれの相同染色体(2本の染色分体)は別々の方向に分かれ、第一分裂が終了する(図下中央;この分裂は還元分裂とも呼ばれる)。引き続き、新たなDNA合成を介することなく、減数第二分裂が開始する。第二分裂では2本の姉妹染色分体が別の方向に分かれる(この分裂は均等分裂とも呼ばれる)。こうして出来た4個の娘細胞にはそれぞれ元の細胞の半分の量のDNAが含まれる(右下)。 減数第一分裂前期では、相同染色体の間で乗換え(交差あるいは交叉とも呼ばれる;crossover)が起こり、一部の配列を取り替える(組換え)。相同染色体が乗り換えた部位で形成される構造はキアズマと呼ばれる。このように、減数分裂の重要性は、組換えによって様々な遺伝子の組み合わせを生み出し、しかも異なった組み合わせの染色体を持つ配偶子が形成することにある。すなわち、減数分裂は子孫の遺伝的多様性をつくりあげることに大きな役割を果たしている。また近年の研究によれば、乗換えの過程そのものが染色体分離を正常に行わせるのに必須のイベントであることも明らかになってきている。
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