淡輪遊園とは? わかりやすく解説

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淡輪遊園

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/16 08:38 UTC 版)

淡輪遊園(たんのわゆうえん)[注釈 1]は、大阪府泉南郡岬町にある公園。現在は町営だが、明治から戦前にかけては南海電鉄によって開発されたリゾート遊園地であった。

淡輪遊園
所在地
大阪府泉南郡岬町淡輪838−20
座標 北緯34度20分6.8秒 東経135度10分44.5秒 / 北緯34.335222度 東経135.179028度 / 34.335222; 135.179028座標: 北緯34度20分6.8秒 東経135度10分44.5秒 / 北緯34.335222度 東経135.179028度 / 34.335222; 135.179028
開園 1911年
運営者 南海電気鉄道→岬町
アクセス #交通参照
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歴史

1903年(明治36年)、大阪朝日新聞に記者西村天囚による十数日に渡るコラム「海風、淡輪游記」が掲載され、この記事によって淡輪景勝地として知られるようになった[2]

ここに目を付けた南海鉄道は当地の開発に乗り出し、1904年(明治37年)に淡輪黒崎に黒崎海水浴場(現在のときめきビーチ)を開業。同年のシーズンだけで1000人を超す来場者が押し寄せたという[2]。当時すでに南海本線は開通していたものの淡輪に駅はなく箱作から村営連絡船でアクセスしていたが、1906年(明治39年)に箱作~深日間に海水浴客向けの簡易乗降場として淡輪駅が開業した[3][4]

淡輪遊園のある愛宕山は同年に園地として段階的に整備がはじめられ、1911年(明治44年)に上水道電燈を整備し本格開業した。同年には南海本線の電化と淡輪駅の常設駅化が完成している[2][3]1916年(大正5年)からは近隣の淡輪港から淡路島由良洲本とを結ぶ航路も開設された[5]

現在も園の名物となっているツツジは1925年大正14年)に植樹されたものである[2]

1939年(昭和14年)に淡輪村は都市計画法の適用を受けた[6]

戦後、南淡輪の大阪ゴルフクラブの周辺に南海が都市公園みさき公園)を建設することが決まり(みさき公園#開園から動物園・水族館の営業終了までの経緯を参照)、1957年(昭和32年)に開業すると南海の経営の中心はみさき公園へと移行していった[注釈 2]。南海の撤退時期は不明だが、1984年(昭和59年)発行の地理院地図では、1967年(昭和42年)版まで書かれていた「淡輪遊園」の表記は消されている[7]

その後、淡輪海岸には1975年(昭和50年)に青少年海洋センター、1984年(昭和59年)に淡輪ヨットハーバーが完成。淡輪海水浴場は1996年平成8年)の関西国際空港開港に伴い府立せんなん里海公園の一部として再整備され、2025年令和7年)現在淡輪は海洋レクリエーション地区として注目されている[8]

施設

1907年(明治40年)には旧阪堺鉄道の木造客車を用いた列車ホテルが建設されたほか[9]、同時期には海水を用いた人工瀑布「汐の滝[4]」、菖蒲園なども造られた[2]。また1937年昭和12年)には村内に湧き出る冷泉を活用し、海岸3000坪を拓いて「淡輪温泉」も開業[6]。全盛期には周囲に数軒の旅館が立ち並び、ボート釣り船の貸し出しも行っていたという[3]

1955年(昭和30年)前後のマップでは園内には2基の飛行塔や子供汽車、グラウンド、野外劇場などが確認できる[10]

遊園時代の名物行事が「つつじ人形」[注釈 3]であり、たびたびイベントが催された[10]。戦後、淡輪温泉の建物が「つつじ人形館」としてリニューアルされ利用された[8]が、後に会場はみさき公園に移転した[12][注釈 4]

2025年(令和7年)現在の園内に当時からの建物はほとんど残されていないが、当時から残る3万本とも5万本ともいわれるツツジ大阪湾の景観で著名で、花見シーズンには観光客も多く訪れる[13]。また愛宕山の中腹では1904年(明治37年)創業の旅館「龍宮館」が営業を続けている[14]

交通

  • 南海本線淡輪駅から徒歩8分。
    • かつては急行停車駅であった。1925年(大正14年)に完成したスイスをイメージした駅舎が、無人駅となった現在も使用されている[10]
  • 淡輪港から徒歩10分。

脚注

  1. ^ 村上義久『南海の栞』成巧社、1912年。 
  2. ^ a b c d e 南海鉄道 編『開通五十年』南海鉄道、1936年https://dl.ndl.go.jp/pid/1266118/1/34 
  3. ^ a b c 南海鉄道 編『南海沿線厚生施設篇』南海鉄道、1941年https://dl.ndl.go.jp/pid/1098906/1/4 
  4. ^ a b c みさき風土記編集委員会 編『みさき風土記』岬ライオンズクラブ、1986年。 
  5. ^ 大阪商船 編『大阪商船株式會社五十年史』大阪商船、1934年。 
  6. ^ a b 淡輪の歴史 昭和”. www.tannowa.or.jp. 2025年11月3日閲覧。
  7. ^ 今昔マップ on the web:時系列地形図閲覧サイト|埼玉大学教育学部 谷謙二(人文地理学研究室)”. ktgis.net. 2025年11月3日閲覧。
  8. ^ a b 淡輪の歴史 現代~”. www.tannowa.or.jp. 2025年11月3日閲覧。
  9. ^ 産経新聞 (2015年11月13日). “【絵ハガキ時空散歩】役目を終えた木造客車を使用 淡輪遊園「汽車ホテル」”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年11月3日閲覧。
  10. ^ a b c 橋爪紳也『大阪のなぞ 歴史がつくってきた街のかたち』河出書房新社、2025年https://www.google.co.jp/books/edition/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%9E_%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D/4xhnEQAAQBAJ?hl=ja&gbpv=1&dq=%E6%B7%A1%E8%BC%AA%E9%81%8A%E5%9C%92%E3%81%A4%E3%81%A4%E3%81%98%E4%BA%BA%E5%BD%A2&pg=PA65-IA9&printsec=frontcover 
  11. ^ 令和3・4年度 堺市南区政策会議 第3回ブランド戦略推進・魅力創造部会 会議録(要点記録)
  12. ^ 『広告年鑑 1964年』万年社。 
  13. ^ あたご山”. OSAKA INFO. 2025年11月3日閲覧。
  14. ^ 夕陽の宿 龍宮館【公式サイト】”. 夕陽の宿 龍宮館【公式サイト】. 2025年11月3日閲覧。
  15. ^ 海商社 編『海運年鑑』海商社、1935年https://www.google.co.jp/books/edition/%E6%B5%B7%E9%81%8B%E5%B9%B4%E9%91%91/bROWvsMsTYYC?hl=ja&gbpv=1&dq=%E6%B7%A1%E8%BC%AA+%E6%B4%B2%E6%9C%AC%E3%80%80%E4%B8%89%E6%B1%BD%E8%88%B9&pg=PA200&printsec=frontcover 

注釈

  1. ^ 大正期の書物には「愛宕山神秀園」との記述も残っている[1]。また戦前の地理院地図には「愛宕遊園」と記されている。
  2. ^ みさき公園開園に際して開催された「みさき公園自然動物園開設記念 世界探検博覧会」においては、淡輪遊園が第二会場として使用された。
  3. ^ ひらかたパークの「菊人形」に近い[11]
  4. ^ 1965年(昭和40年)の『広告年鑑』に掲載されている「つつじ人形」には第一会場をみさき公園、第二会場を淡輪遊園とする旨が書かれているが、そう扱われたのは当年が最後である。

関連項目

  • 大浜公園 - 同時期に南海電鉄によって造成されたリゾート。
  • さやま遊園 - 同じく南海電鉄によって運営された遊園地。
  • 砂川遊園 - 同じく泉南地域に私鉄によって造られた遊園地。



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