毎日新聞によるスクープ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/05 03:03 UTC 版)
「三億円別件逮捕事件」の記事における「毎日新聞によるスクープ」の解説
ところがこのAに対する疑惑は、「三億円事件に重要参考人 府中市の元運転手」と題した同年12月12日付毎日新聞朝刊社会面トップのスクープ記事によって、日本中の知るところとなってしまう。このスクープ記事は、上記のようなAの疑わしい点を並べる一方、筆跡の不一致や物証の欠如など、否定材料も僅かながら取り上げている。しかしながら、記事は彼を「A」とアルファベット1文字で匿名ながら呼び捨てにするもので、全体としてAが犯人であるとの印象を与えるものであった。 捜査関係者らは、現場の刑事にすら周知されていないはずの特捜本部の極秘情報が、毎日新聞に漏れたことに狼狽した。一方、スクープ記事の筆者であった毎日新聞社会部記者の井草隆雄は、捜査情報を自分にリークしたのは他ならぬ平塚八兵衛である、と後になって告白している。井草によると、記者嫌いの平塚と例外的に懇意にしていた彼は、スクープ前日の11日夜、電話で平塚の自宅に呼び寄せられたのだという。井草は、渡された捜査資料を平塚の自宅ですべて書き写したが、その時の平塚は「初動で散々喰い散らかされている」と漏らすなど、捜査に乗り気ではなかったという。当初の井草も、「筆跡が違う」との平塚の言葉から、Aの存在は「まだ書けないネタ」と考えていた。しかし、記事化を強く迫る本社サブキャップに押され、筆跡のような否定材料も入れることを条件に原稿を執筆したのだという。このため、記事の掲載面も1面トップは避けられ、社会面トップとされることになった。 一方、警視庁刑事部長であった土田國保は、毎日新聞からの問い合わせによって、11日深夜にはスクープの存在を把握していた。情報漏洩に驚愕した土田はすぐさま、社会部部長に対し記事の差し止めを要請した。だが、その時には既に輪転機が回り始めていたため果たせず、報道によるAの逃亡を恐れた警視庁は、即座に見切り発車でAの身柄拘束を余儀なくされた。
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