欧米における状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 15:42 UTC 版)
アメリカ、イギリス、オーストラリア、シンガポールなどの国や州・都市では24時間以内の商業的な風船飛ばし行為の数量規制や罰則の条例がもうけられている。 中でもイギリスでは、バルーン業界が企画し学校・慈善イベント向けに地元企業からイベントスポンサーを募り、参加者のチケット販売などで収益を上げるバルーンレース(balloon races)が普及しているが、このような団体の資金獲得型バルーンレースの行為にecoスクールに認定された小学校が反対を表明。一方でイギリス王立の海洋保全団体(MCS)の1990年代後半から現在まで継続的に調査が行われている海岸清掃の結果で漂着ごみ としてのゴム風船が10年で3倍にも増えたとする調査結果とともに生物学者が風船飛ばしの行為に反対する声明を発表。国家規模で風船飛ばしの反対を呼びかける「Don't Let Go Campaign leaflet」というパンフレットまで制作されるなど大きな影響が出てきている。 また生物・環境保護団体やその関連団体も、ウミガメ、クジラ、イルカなどの海棲生物や野鳥や海鳥、ペンギンなどの野生生物への誤飲やヒナに親鳥が与える影響、景観美化などの影響から、特にゴム風船による大量の風船飛ばしの行為に反対を唱えており、2009年にはカナダ・トロント大などの研究グループの調査で、死体で見つかった多くのオサガメの4割で人工のゴミが見つかり、またゴム風船なども多く出てきている調査報告がある。 なおオーストラリアでは捕獲したアカウミガメの死んだ稚カメの体内からゴム風船が見つかっているが、アカウミガメの産卵地は日本国内にもあるなど、日本も看過のできない調査結果が出てきている。 これらの風船飛ばしの反対の動きに対し、各バルーン協会は反発をしているが、イギリスのバルーン協会(NABAS)では「小規模の風船飛ばしのイベントにまでバルーン業者が関わるべきでないが、バルーン業者が介在しない一般個人や団体が行う行為は環境保護の観点からも1000個程度にとどめるべき」というバルーンリリースの指針を示している。 ゴム風船による風船飛ばしは欧米の様々なレポートにより、全体の5~10%が原形をとどめた状態で地上や海に落下するほか、ゴム風船の劣化には6か月、海水で分解するのに12か月を要することがあり、ある年は世界では6万個程度のゴム風船が海岸部に打ち寄せたというレポートもある。 英語圏では現在では多くの野生生物環境団体の英語で書かれたインターネットのホームページにより「風船飛ばしは弊害もある」ことが掲載されており、それらの情報は民間にも少なからず知られている。欧米では盛んな風船飛ばしの弊害の情報が、日本で顕在化していないのは、日本人に英語を理解できる人が多いわけではないことが大きく影響しているとともに、日本国内のマスコミも積極的に問題を取り上げてこなかったことも一因とみられる。 2020年、アメリカ カリフォルニア州ベンチュラ市にて、サイエントロジー(新興宗教)の教会オープニング式典で数百個の風船を飛ばしを実施した。これに対してベンチュラ市の市長は、「環境保護を主張している教会が、その環境を傷つける風船を飛ばすとは、正真正銘の偽善だ」として批判したため、後日、教会側が市議会で謝罪することがあった。
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