構成および原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 08:54 UTC 版)
典型的な製造設備は次のような構成要素から成る。あらかじめ硝石と硫酸とを反応させてプロセス内に窒素酸化物を充満させておく。 2 NaNO 3 + H 2 SO 4 ⟶ Na 2 SO 4 + H 2 O + NO + NO 2 + O 2 {\displaystyle {\ce {2NaNO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + NO + NO2 + O2}}} 2 NOHSO 4 + H 2 O ⟶ 2 H 2 SO 4 + NO + NO 2 {\displaystyle {\ce {2NOHSO4 + H2O -> 2H2SO4 + NO + NO2}}} 焙焼炉 以下の構成要素に対する二酸化硫黄の供給源となる。硫黄を焙焼することによって、含量8 - 9 %程度の二酸化硫黄を含む気体を発生させる。 S 8 + 8 O 2 ⟶ 8 SO 2 {\displaystyle {\ce {S8 + 8O2 -> 8SO2}}} 4 FeS 2 + 11 O 2 ⟶ 2 Fe 2 O 3 + 8 SO 2 {\displaystyle {\ce {4FeS2 + 11O2 -> 2Fe2O3 + 8SO2}}} グローバー塔 (以下に述べる)ゲイ=リュサック塔から供給される窒素酸化物が溶け込んだ含硝硫酸を、(以下に述べる)鉛室から供給される35 %程度の硫酸で薄めて、焙焼炉から供給される二酸化硫黄と反応させ、78 %程度の硫酸を製造する装置である。未反応の二酸化硫黄と窒素酸化物とを含むガスは、以下の鉛室に送られる。 鉛室 厚さ数 mmの鉛製タンクで、この製造法における主要反応設備である。グローバー塔で硫酸とならなかった高温の二酸化硫黄ガスに水を噴霧し、35 %程度の硫酸を製造する。この硫酸はグローバー塔に送られ、窒素酸化物を主成分とする排ガスは以下のゲイ=リュサック塔に送られる。 水の存在により窒素酸化物は亜硝酸・硝酸に変化し、二酸化硫黄を酸化させるなど様々な経路を経て硫酸が生成される。中間物質である硫酸水素ニトロシルNOHSO4を経る特徴的な変化手順を示すと以下のようになる。反応には冷却が欠かせないため鉛室は必然的に大きくなる。 2 NO 2 + H 2 O ⟶ HNO 2 + HNO 3 {\displaystyle {\ce {2NO2 + H2O -> HNO2 + HNO3}}} SO 2 ( aq ) + 2 HNO 2 ⟶ H 2 SO 4 + 2 NO {\displaystyle {\ce {SO2(aq) + 2HNO2 -> H2SO4 + 2NO}}} SO 2 ( aq ) + HNO 3 ⟶ NOHSO 4 {\displaystyle {\ce {SO2(aq) + HNO3 -> NOHSO4}}} NOHSO 4 + HNO 2 ⟶ H 2 SO 4 + NO 2 + NO {\displaystyle {\ce {NOHSO4 + HNO2 -> H2SO4 + NO2 + NO}}} 2 NO + O 2 ⟶ 2 NO 2 {\displaystyle {\ce {2NO +O2 -> 2NO2}}} ゲイ=リュサック塔 グローバー塔で生成した78 %程度の硫酸の一部と鉛室から送られる排ガスを反応させ、硫酸水素ニトロシルなどを含む含硝硫酸を製造する。これにより窒素酸化物は回収され、残りはプロセス外へ排ガスとして出される。ゲイ=リュサック塔で生成した含硝硫酸はグローバー塔に送られ、窒素酸化物源および硫酸源として利用される。結果的に窒素酸化物は二酸化硫黄を酸化させる触媒として機能し、系内を循環する触媒として機能する。 2 H 2 SO 4 + NO + NO 2 ⟶ 2 NOHSO 4 + H 2 O {\displaystyle {\ce {2H2SO4 + NO + NO2 -> 2NOHSO4 + H2O}}} H 2 SO 4 + 2 NO 2 ⟶ NOHSO 4 + HNO 3 {\displaystyle {\ce {H2SO4 + 2NO2 -> NOHSO4 + HNO3}}} 結果として次の発熱反応が系内で起きていることになる。 SO 2 + 1 2 O 2 + H 2 O ⟶ H 2 SO 4 + 54 , 000 cal {\displaystyle {\ce {SO2 + 1/2O2 +H2O -> H2SO4 + 54,000 cal}}} 最終的に取り出される硫酸の濃度は74 %程度となる。この硫酸は濃硫酸ではないため、濃硫酸を得るためにはさらに加熱して脱水するなどして精製を行う必要がある。のちに登場した接触法では97 %程度の濃硫酸が直接得られるため、得られる濃度については接触法にアドバンテージがある。また反応に鉛室を用いているため、生成した硫酸には少なからず鉛などの重金属やヒ素などの有害物質が含まれる。これは、生成した硫酸を肥料原料に用いる際などに問題となった。
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