植物への生育促進
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 15:34 UTC 版)
根圏の主である植物は、根圏中の他の生物の生育を促進することで、その見返りを受け取り、生育を促進してもらっている。このため、植物と一部の根圏生物との相利共生の関係が構築されている。以下に根圏微生物による生育促進効果を示す。 土壌中の不溶性リンの可溶化 鉄キレート剤であるシデロホアを生産する。シデロホアは鉄を可溶化させる。植物に鉄を直接的に供給し、また、土壌環境から鉄を除去することで植物病原菌の生育を妨害する。ひよこ豆Cicer arietinumの根圏には、シデロホアを高水準(鉄制限下のコハク酸培地で1000µg/mL)で産生するPseudomonas sp.が単離されている。 菌根形成の活性化 オーキシンやサイトカイニンといった植物ホルモンを分泌する。これらの物質は植物の生長を刺激する。Azotobacter属やPseudomonas属の一部はサイトカイニンの生産者であることが知られている。特にA. chroococcumの生産性は高い。 エチレンの合成前駆体を分解する。この植物ホルモンは果実の成熟と老化を促進したり、葉や花、果実を落としたり、茎の伸長成長を阻害したり、茎の横方向への肥大を促進したりなどする。根圏細菌によるエチレン前駆体の分解は植物の成長速度を安定維持する。 植物に対する重金属ニッケルの毒性軽減 一部の根圏細菌は抗生物質を生産し、植物病原性の真菌の病原性を抑える。 Acinetobacter calcoaceticus P23はウキクサと相利共生し、その表層でフェノールを分解する。鈴木ら(2013)はP23株をウキクサ科のコウキクサに接種したところ、その葉状体数、湿/乾燥重量、葉のクロロフィル量が増加した。接種を受けた双子葉植物のレタスでもクロロフィル量は増加した。いずれの場合も、特に貧栄養条件でこの効果は顕著であった。 バイオフィルムの形成による病原微生物の繁殖抑制Bacillus subtilisは植物の根にバイオフィルムを形成し、病原菌から根を保護する。
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