未解読の暗号文
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 01:52 UTC 版)
|||4, |3, 5|, |6, 6||, 7|||, |8, 5, 1, 3, ||6, 7|, 3|, 2|, 4|, 3|, |4, |||2, ||5, |1。 ||6, 8, 2|, 6||, 7, 6, 7|, 6||, |4, ||5, 7||, |||2, |||4, 5|。 300×50×30。 暗号文(長田順行の校訂による) 本作には、ユダからビクリを通じて耶蘇に手渡された、という設定の暗号文が登場する。作中ではサウロが解読しているが、その解読結果は読者に示されないまま話が終わってしまう。 松山俊太郎は、現代教養文庫版『小栗虫太郎傑作選』に本作を収録する際、暗号研究家の長田順行に解読を依頼した。長田は、暗号形式は単一文字換字法で、使用されている文字は23種類34文字であり、このことからアラム語、ヘブライ語、英語、ラテン語、日本語のローマ字表記である可能性はなく、日本語のカナ文字表記である可能性がある、と推定した。その上で、カナ書き日本語の単一換字式暗号では、理論上、文字列のみから解を一つに定めるには約55文字以上が必要であるが、この暗号文は文字数が少なすぎるため、通常の解読法では解を一つに定めることができない、とした。松山は、イエス・キリスト時代の話なのに日本語による暗号文が登場する、という不自然さをカバーするために、日本人による作中作という設定にしたのではないか、と推定している。 1980年(昭和55年)、推理小説ファンの二瓶寛が解読に成功したと主張した。長田の推定通り日本語カナ文字の単一換字式暗号だと仮定した上で、「イエスキリスト」をキーワードとして解読したものである。また、小説の結末に、源内はひそかに「遠州の相良」に隠棲した、という記述があることから、末尾の「300×50×30。」は、 300=10×10×3、「トオ・トオ・ミ」すなわち「遠江」、 50 はゴジュウ=ゴジョウ(御城)、 30=3・0、「サ・カラ」すなわち「相良」で、源内が自身の隠れ場所を示したもの、と解読した。さらに、この暗号文には裏の意味があるとして、「ヒラカケンナイ」(平賀源内)をキーワードにした解読も示した。これについて長田順行は、「イエスキリスト」をキーワードとした解読と「300×50×30。」の解読については「ほぼ間違いない」としつつも、「ヒラカケンナイ」をキーワードとした「ウラの暗号」については「確定された文字があまりにも少ない。あとは極端にいえば当てずっぽうでしょう」と評している。 二瓶はその後、作中で未解明のままに終わっている「算勘書」(みつもりしょ)をキーワードとした、第三の解読も示している。これについて長田は、「「暗号文の字数が少ないので、いく通りにもとれるだろう」という、私の推測を実証してもらった」と評している。 なお、本作に限らず小栗作品には暗号が頻出するが、長田順行は、その説明がしばしば不正確で非論理的になっていることを指摘しつつ、「超合理主義を目指した虫太郎にとって、暗号もまた装飾の一つであったと考えられる」と述べている。この点については、小栗自身もエッセイ「反暗号学(アンチクリプトグラフィー)」において、「未だ曽て、私は暗号で解決する小説を一篇すらも書いていない」と述べ、自作に登場する暗号が実際には装飾的に用いられていることを認めている。
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