日本の刑事訴訟における証拠開示
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/27 05:00 UTC 版)
「開示手続」の記事における「日本の刑事訴訟における証拠開示」の解説
日本の刑事手続においては、起訴前の段階に関する証拠開示の制度は法定されていない。 起訴後においては、2004年の刑事訴訟法改正により以下のような証拠開示の制度が規定された。同改正以前においては制度が存在せず、裁判所が訴訟指揮権に基づき個別に証拠開示を命じる個別開示方式に依存していた。 「公判前整理手続#公判前整理手続の流れ」も参照 検察官請求証拠開示 公判前整理手続に付されている事件においては、検察官は、公判前整理手続において、公判において証明する予定の事実を裁判所に提出し、被告人または弁護人に送付したうえで証拠調べの請求を行わなければならない(刑事訴訟法第316条の13)。公判開始前に開示義務を生じさせる規定は、2004年改正で初めて導入されたものである。なお、公判前整理手続に付された事件については、原則的に公判における新たな証拠調べの請求は禁止される(刑事訴訟法第316条の32)。 請求証拠開示の際、検察官は、証拠書類・証拠物を弁護人に閲覧・謄写する機会を与えなければならない。また、証人、鑑定人、通訳人や翻訳人がある場合には、その氏名および住居を通知し、それらの者による供述を録取した書面から、「その者の公判期日において供述すると思料する内容が明らかになる」部分を閲覧・謄写させる必要がある(刑事訴訟法第316条の14)。証人等について、改正前には氏名および住居の通知義務のみが規定されていた(改正前刑事訴訟法第299条第1項)ところ、供述録取書面についても自動的に開示されることが規定された点が新しい。 類型証拠開示 検察官請求証拠の証明力判断のために重要と認められる場合、法定の一定の類型の証拠について、検察官による開示義務およびその手続が規定されている(刑事訴訟法第316条の15以下)。 争点関連証拠開示 弁護側は、公判前整理手続において公判で主張する予定の事実または法的主張について開示する必要があるが(刑事訴訟法第316条の17)、その上で、検察官は弁護側の主張に関連する証拠を開示する義務を負うこととされた(刑事訴訟法第316条の20)。 上記のとおり、弁護側も検察側に対する証拠開示義務を負っている。具体的には以下のとおりである。弁護側請求予定証拠書類・証拠物がある場合には、検察官に閲覧・謄写の機会を与えなければならない(刑事訴訟法第316条の18第1号)。 弁護側が証人等を申請する場合には検察官にその氏名および住居を知らせ、供述書面がある場合には、その証人等が証言すると思料する内容が明らかになるものを閲覧・謄写する機会を与えなければならない(刑事訴訟法第316条の18第2号)。
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