日本でのコレステロール値の決定プロセス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 07:18 UTC 版)
「コレステロール」の記事における「日本でのコレステロール値の決定プロセス」の解説
日本では一般にコレステロール値が高いと言うのは、総コレステロール値が220以上の場合を指す。これは日本動脈硬化学会が作成した「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が大きく影響している。これは動脈硬化性疾患をスクリーニングための診断基準としている。ガン検診でガンの疑いがあるとされても、いきなりガン治療を始めるわけではないのと同様に、スクリーニングでは220以上でも、多くの患者が治療を必要とはしないケースが多数あるからである。 一般にスクリーニングは、精密検査を必要とする患者予備軍を簡単な検査によって精密検査前に絞り込むことが求められる。しかし、総コレステロール値が220以上をすべて患者予備軍としてしまうために、男性では26%、女性では33%が要精密検査と判定されている。動脈硬化による主な病状は心筋梗塞があるが、コレステロール値を検査することで動脈硬化と心筋梗塞へ至る症状の予防が求められるのに、現状では心筋梗塞が男性に比べて1⁄2から1⁄3の女性の方が、多くの割合で要精密検査となってしまう。 1980年代まではこの基準が250から240になっていたが、これは95%の人がこの基準値以下で健康であったためである。1987年に日本動脈硬化学会が「コンセンサス・カンファレンス」で基準値を220としたため、これ以降は220が使われている。220が科学的な妥当性を欠いているという意見は決定以降も多数あり、6年間・5万人を対象に行われた「日本脂質介入試験」の結果も、240を境に有意に心臓の冠動脈疾患のリスク上昇を示していたが、結果として2007年現在も、220が基準となっている。 一度は1999年に240への改定の直前まで行ったが、日本動脈硬化学会内の改定反対派の主張する「220がすでに定着しており、変更すれば医療現場に混乱が起きる」という意見が通り見送られた。240を採用すると患者数が半減するため、病院経営の危機を招くとしての判断が働いたのではないかとする見方がある。 また、220の基準でスクリーニングに掛かって診察を受け、動脈硬化疾患などの病気と診断された後は、治療目標値がなぜか240といきなり緩和される逆転現象が起きてしまうという、不合理な状況にある。
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