抗がん剤の副作用と対策・支持療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 02:02 UTC 版)
「白血病」の記事における「抗がん剤の副作用と対策・支持療法」の解説
白血病の治療では主に抗がん剤を使う。白血病の多くは症状が厳しく急を要し難治なので治療も強いものにならざるをえず、白血病細胞が薬剤耐性を持たないようにするため抗がん剤は多剤を併用することが標準である。もともと白血病特に急性白血病では正常な血液細胞が減ることが多く、感染症、貧血症状、易出血傾向などが見られるが、抗がん剤では骨髄が抑制(造血細胞が抗がん剤で減少する)されるので感染症、貧血症状、易出血傾向はさらに悪化することが多い。そのために感染症対策や、赤血球や血小板の輸血、時には顆粒球コロニー刺激因子投与などは重要になる。抗がん剤の副作用はさまざまであるが、主なものを右に挙げた。急性骨髄性白血病の治療で用いられることが多いシタラビン(Ara-C, キロサイド)では骨髄抑制、嘔気・嘔吐、下痢、脱毛、肝・腎機能障害などに加えてシタラビンの特徴として結膜炎や脳の障害が見られることがある。シタラビン大量療法ではステロイド点眼薬が必要になる。やはり急性骨髄性白血病で用いられることが多いアントラサイクリン系の抗がん剤では骨髄抑制、嘔気・嘔吐、脱毛などの他にアントラサイクリン系特有の心臓への毒性がある。急性リンパ性白血病で使われるビンクリスチン(オンコビン)では抗がん剤に共通する副作用の他に神経毒性、ひどい便秘や腸閉塞、低ナトリウム血症などの電解質異常(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群) などがある。シクロフォスファミド(エンドキサン)では出血性膀胱炎が特有の副作用であり、大量の水分の補給で尿を増やし濃度を薄め早く薬剤を排出させることが必要になる。また、抗がん剤そのものの作用ではないが、治療開始初期には抗がん剤によって大量の白血病細胞が死ぬために白血病細胞の内容物が血液内に一気に放出され高尿酸血症や高カリウム血症、低カルシウム血症などが起き、それによって腎不全に陥ることがある。これを腫瘍崩壊症候群(急性腫瘍融解症候群)と言い、適切な対処をしないと死に至ることもある。また、抗がん剤の代謝、排出器官である肝臓と腎臓に障害があると毒性は一層顕著になるので、臓器に障害がある際には特に注意が必要である。 患者、特に女性患者にとって切実な副作用は脱毛であるが、抗がん剤治療が終れば髪は復活する。個人差はあるものの抗がん剤を使用したその日から脱毛が始めるのではなく抗がん剤を開始してから2-3週間程度で脱毛は始まる。脱毛は頭髪だけでなく全身の毛でも起こりうるが、抗がん剤治療を終了して1-2か月ほどで毛髪は再生し始め、約半年ほどで再生する。再び生えてきた毛髪は抗がん剤治療の前よりは少し細く、質も変わることもあるが2年ほどで髪質も元に戻る。
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