手法・影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 15:20 UTC 版)
『ハッピーアワー』では、ほぼ演技経験のない出演者への演技指導法として、フランスの監督ジャン・ルノワールが実践していた「イタリア式本読み」と呼ばれる手法を採用した。これはルノワールの監督術を描くドキュメンタリー短編『ルノワールの演技指導』で紹介されているもので、実際に撮影に入る前に俳優に台本を読ませる「本読み」を行うが、このとき俳優にいっさいの感情を込めずに「電話帳を読み上げるように」言葉を読みつづけることを要求する。このプロセスを経ることで、俳優は相手のこまかな動作や感情の動きに鋭敏になり、演技の真剣さ・リアリティが濱口の望む方向へ大きく変わるのだという。この手法の一端は、『ドライブ・マイ・カー』で、主人公の舞台演出家が実践する演出として劇中劇の形で描かれている。 また、アメリカのインディペンデント映画監督ジョン・カサヴェテスへの関心を繰り返し語っている。『ハッピーアワー』の旧仮題も『BRIDES(花嫁たち)』で、これはカサヴェテスの映画『Husbands(夫たち)』から「裏面をなすようにして構想された」という。東京大学文学部で美学芸術学研究室に提出した卒業論文も「ジョン・カサヴェテスの時間と空間」だった。 2018年に映画サイトのアンケートで、好きな映画5本としてマキノ正博『決闘高田の馬場』、グレミヨン『曳き船(英語版)』、ハワード・ホークス『赤い河』、カサヴェテス『よみがえるブルース(英語版)』、黒沢清『CURE』を挙げている。 2022年にアメリカの著名なDVDレーベル「クライテリオン」が、自社ラインナップ内からトップ10を選ぶよう求めたさいには、以下の10点を挙げている。ジャック・ベッケル『肉体の冠』、ロッセリーニ『ストロンボリ』、ダグラス・サーク『天はすべて許し給う』、溝口健二『夜の女たち』、『ジャン・ルノワール作品集』、『ジャン・グレミヨン作品集』、成瀬巳喜男『初期サイレント作品集』、ジョセフ・フォン・スタンバーグ『サイレント作品集』、ジョージ・キューカー『素晴らしき休日』、侯孝賢『フラワーズ・オブ・シャンハイ』。
※この「手法・影響」の解説は、「濱口竜介」の解説の一部です。
「手法・影響」を含む「濱口竜介」の記事については、「濱口竜介」の概要を参照ください。
- 手法・影響のページへのリンク