戦略手段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/01 01:40 UTC 版)
大戦略で次に問題となるのは政策を実施するための手段である。国家の権力資源は外交交渉、軍事同盟、宣伝活動、国際法、貿易取引、経済制裁、武力行使など様々な局面に反映され、大戦略は直接的にそれら国力を創造し、管理し、運用するよう指導する。しかしジョン・コリンは国力といっても軍事力がいくつかある要素の一つに過ぎないことに注意を促している。彼は軍事戦略が武力行使を通じた勝利の追及である一方で、大戦略において戦争の勝利と同等に平和の維持が重要であることを指摘する。そして大戦略が軍事戦略を管理し、それを一つの要素として扱うものであると述べている。さらにエドワード・ルトワックは大戦略で扱うものは顕在的な能力だけでなく、潜在的な能力をも含み、両者はトレードオフの関係にあることを指摘している。大戦略の手段として動員可能な軍事力や経済力の基盤には人口規模、技術発展、教育水準などがある。 大戦略は政治力、経済力、心理力、軍事力の4種類の国力を発展し、また運用するものである。政治力は国民性、国家の安定性、政治的リーダーシップ、そして国民の全般能力などに規定される。次に経済力は国家の利用可能資源、産業、交通網、国際貿易、戦時耐久性などに規定される。心理力は国民の団結、社会的安定、国家機構の性格と活力、また愛国心、国民士気、忍耐力、奉仕精神などで規定される能力であり、また外国政府や外国国民の了承や援助をも含む。最後に軍事力は兵員数や装備数、資源、工業能力、人口、国民士気などに規定される。大戦略では運用されるこれら諸能力をどのように組合せる戦略が最適であるかを問題として、相手国が保持する能力をも考慮しながら最適化を追求する。これら種類の手段はトレードオフの関係にあるために、相手国に対して優位を確保するためには集中的な国力開発が必要でありながらも、政治力と心理力、経済力と軍事力などは相互に依存している能力であるために、均衡のとれた国力開発が求められる。
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