感情と情動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 15:47 UTC 版)
「コナトゥス」と人間の情動の関係に関してスピノザがどう考えていたかは明確でない。メリーランド美術大学の哲学助教授のファーミン・ドブランダーと南カリフォルニア大学の神経科学教授のアントニオ・ダマシオは、二人とも、人間の情動は「コナトゥス」あるいは完全を目指す絶え間ない衝動から起こると主張した。実際、スピノザは『エチカ』で、明らかに、幸福は「人間の自己を保存しようとする能力に帰着する」と述べている。また、この「努力」はスピノザによって「美徳の基盤」であると特徴づけられている。逆に、人は自分の「コナトゥス」に反するものがあると必ず悲しくなる。。 イェール大学教授のデイヴィッド・ビドニー(1908年 - 1987年)はこれに反対している。ビドニーは「欲望」、第一の情動とスピノザの原理「コナトゥス」を注意して関連付けている。この考え方は『エチカ』の傍注IIIP9に裏付けられている。そこには「欲望(appetite)と欲望(desire)の間には違いがない。しいて言えば人間がappetiteを自覚している限りではdesireは一般的には人間と結びつけられている。だからdesireはappetiteの自覚を伴うappetiteだと定義することができる」とある。ビドニーによれば、この欲望(desire)は他の情動、喜びや苦痛に支配されており、そのため「コナトゥス」が喜びを生み出すものに向かって努力し、痛みを生み出すものを避ける 。アルトゥール・ショーペンハウアー(1788年 - 1860年)はこれと同様の解釈をしているが、『意志と表象としての世界』(1819年)では、「私の基本的な考え方全体によれば、これは全て真の関係を裏返したものである。意志は第一の、そして根源的なものである。知識は意志に意志の現象の道具として付属するものにすぎない」のでスピノザに反対すると述べている。
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