感情と涙の関係の謎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 05:44 UTC 版)
感情が高ぶった時に人はなぜ涙を流すのかという問いに対して、生化学者のウィリアム・フレイ二世(William H. Frey II)は、涙は感情的緊張によって生じた化学物質を体外へと除去する役割があるのだろう、という仮説を提案し、自身の仮説の妥当性を調べるために実験を行った。実験の内容としては、被験者にいかにも涙を誘う映画を見せて収集した涙と、同じ被験者にタマネギをむかせて収集した涙の、成分の比較をするというものであった。80人あまりの被験者の涙の比較は、(この時点の実験で用いられた検出能力でも、少なくとも)感情による涙は、刺激による涙よりも、より高濃度のタンパク質を含んでいるということを示していた。フレイはその実験内容を含む著書を1985年に出版している。 この実験は、感情と涙の成分には何らかの関係がある、ということを示しており、フレイの仮説をおおよそ裏付ける内容となっているが、様々な種類の感情とタンパク質の関係が明らかにされているわけではないようである。 イスラエルのワイツマン科学研究所の認知神経科学者Noam Sobelらの実験で、女性の涙は男性の性的興奮を減退させ、テストステロン濃度を低下させる化学信号が含まれているという結果が得られたと発表された。ただし涙に含まれるどの成分が男性の性的反応を抑制するのかについては未解明で、さらに詳しい研究が必要である。
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