惑星・遊星という呼称の由来
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 04:27 UTC 版)
漢字の「惑星」という呼称は、長崎のオランダ通詞・本木良永が1792年(寛政4年)、コペルニクスの地動説を翻訳する際に初めて用いた漢訳語(和製漢語)と考えられている。天球上の一点に留まらずうろうろと位置を変える様子を「惑う星」と表現したことから来たと言われている。つまり天動説が主流であったころ星座を形作る夜空の星々が北極星を中心に天球上の定位置で大空を回るのに対し、一部の金星や火星などは日ごとに位置を変え明らかに不規則な動きをするため「惑わす星」と見えたのである(→順行・逆行)。 天文学が発達する以前は、天動説の見地から太陽や月も惑星の中に分類されており、七曜、週の曜日名や占星術にその考えかたの名残がある(なお、現在の天文学上の定義では、太陽は恒星、月は衛星に分類される)。 惑星は、古くは遊星(ゆうせい)とも言った。「遊星」と「惑星」はともに江戸時代にまでさかのぼる言葉であり(ただし古い例では「游星」となっている)、他に「行星」の表記も使われた(参考:惑星と遊星)。 明治期に学術用語の統一を図る際に、東京大学閥が「惑星」、京都大学閥が「遊星」を主張した。結局東大閥が勝ち、天文学の分野では「惑星」の表記に統一された。しかし、機械工学における「遊星歯車機構」など異分野の用語として用いられるほか、フィクション内の表現として「遊星」の名が使われる例もある(例:『遊星からの物体X』、『遊星仮面』、遊星爆弾(『宇宙戦艦ヤマト』)、移動遊星(『21エモン』)、スタント遊星(『ファイブスター物語』)など)。 漢字圏(日・中・朝・越)では「惑星」という漢語は日本のみが使用し、中・朝・越は「行星」という。「恒星」と「行星」という漢語はいずれも明末清初に西欧天文書が漢訳される際に参照された古代中国の宇宙論に由来するもので、「惑星」も同様に木本の造語ではなく古代中国の宇宙論に由来すると考えられるが、初出は不明である。上海博物館蔵戦国楚竹書に「恒先」と仮称される文献があり、その宇宙論が「恒」と「惑」(或)および「恒」と「行」によって構成されていることが浅野裕一『古代中国の宇宙論』(2006, 94-96頁)に紹介されている。
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