彼女の神秘主義思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 13:49 UTC 版)
「アビラのテレサ」の記事における「彼女の神秘主義思想」の解説
テレサの全著作を通じての神秘思想の要点は、4つの段階を経る魂の向上である(『自叙伝』第5章22節)(訳注:この段階については諸説があり、必ずしもここでの説明が全てではない)。第一段階の「瞑想」(heart's devotion)は、敬虔な沈思黙考あるいは集中力のことであり、魂を外部から撤退させて、ただひたすらにキリストの愛に従い、忍耐することである。 第二段階は「静寂」(devotion of peace)であり、その段階においては少なくとも人間の意志は失われ、神から与えられたカリスマ的、超自然的な状態に基づいて、神の中にいる。その一方で、記憶、理性、想像力などの他の働きは、まだ現世の喧騒から守られてはいない。部分的な注意散漫は、祈りの反復や霊的な事柄を書き記すような外部に向けての行動のために起こる。しかし、その一方で次第に一種の静けさの状態が心を占めるようになる。 第三段階は「合一」(devotion of union)であり、これは超自然的なだけではなく本質的に宗教的な意味での恍惚状態(訳注:法悦)である。この段階においては、神への信仰に理性までも没頭するので、ただ記憶と想像力だけが取りとめもなく広がって行くに任せられる。この状態は、この上ない平和、(最上ではないにしても)より高次の魂の働きの甘いまどろみ、現実との接点を残した状態での神の愛への歓喜、などとして描写される。 第四段階は「恍惚あるいは歓喜」(devotion of ecstasy or rapture)という受動的な状態であり、ここでは身体が存在するという感覚が消滅する(「コリントの信徒への手紙二」12.2-3)感覚の働きが消えるということは、つまり、記憶や想像力までもが神にすっかり夢中になってしまう、あるいは、酔ったような状態になってしまうということである。身体と精神は、甘美な激痛、幸せな苦痛、恐ろしいまでに激しい輝きと完全な無能・無意識との間の交替現象、そして、しばしの窒息状態の中に置かれる。そしてそれは、身体が文字通り宙に浮く恍惚の浮揚のような現象によって時々中断される。半時間ほどこうした現象が続いた後、数時間の気絶のような衰弱状態の中で反動の弛緩を味わう。この時、神との合一の全ての働きを否定する気分を伴う。ここから、主体は自分の涙に気付く。つまりそれが神秘体験の絶頂、恍惚状態の創出なのである。
※この「彼女の神秘主義思想」の解説は、「アビラのテレサ」の解説の一部です。
「彼女の神秘主義思想」を含む「アビラのテレサ」の記事については、「アビラのテレサ」の概要を参照ください。
- 彼女の神秘主義思想のページへのリンク