形式的な構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 14:37 UTC 版)
詳細は「商体」を参照 集合論の形式により、整数全体 Z から有理数全体 Q を構成することができる。まず整数の順序対 (a, b) で b ≠ 0 であるものの全体 E = Z ×(Z − {0}) を考える。ここで E 上の関係 ∼ を ( a , b ) ∼ ( c , d ) ⟺ a d − b c = 0 ( a , b , c , d ∈ Z , b ≠ 0 , d ≠ 0 ) {\displaystyle (a,b)\sim (c,d)\iff ad-bc=0\quad (a,b,c,d\in \mathbb {Z} ,b\neq 0,d\neq 0)} によって定めると、関係 ∼ は同値関係となる。商集合 E/∼ を改めて Q と記して、Q における対 (a, b) の属する同値類を a/b と記すことにすると、この表記は一意ではなく、異なる代表元 (c, d) について a b = c d ⟺ a d − b c = 0 {\displaystyle {a \over b}={c \over d}\iff ad-bc=0} となる。このとき、Q における加法および乗法を前節で述べたように a b + c d = a d + b c b d , a b × c d = a c b d {\displaystyle {a \over b}+{c \over d}={ad+bc \over bd},\quad {a \over b}\times {c \over d}={ac \over bd}} で定めると、この加法と乗法は剰余類同士の演算として矛盾なく定義されている。実際、E における加法および乗法を ( a , b ) + ( c , d ) = ( a d + b c , b d ) , ( a , b ) × ( c , d ) = ( a c , b d ) {\displaystyle (a,b)+(c,d)=(ad+bc,bd),\quad (a,b)\times (c,d)=(ac,bd)} と定めると、(a, b) ∼ (a′, b'), (c, d) ∼ (c′, d') ならば ( a , b ) + ( c , d ) ∼ ( a ′ , b ′ ) + ( c ′ , d ′ ) , ( a , b ) × ( c , d ) ∼ ( a ′ , b ′ ) × ( c ′ , d ′ ) {\displaystyle (a,b)+(c,d)\sim (a',b')+(c',d'),\quad (a,b)\times (c,d)\sim (a',b')\times (c',d')} が成り立つので、Q における加法および乗法は剰余類 a/b, c/d 各々の代表元 (a, b), (c, d) のとり方に依らない。(0, 1), (1, 1) の属する同値類 0/1, 1/1 が Q における零元および単位元となることが確かめられ、マイナス元と逆元が上述のように得られるので、これで Q における上述のような四則が全て形式的に正当化される。また、写像 ι を ι : Z → Q = E / ∼ ; m ↦ m 1 {\displaystyle \iota \colon \mathbb {Z} \to \mathbb {Q} =E/\sim {};\ m\mapsto {m \over 1}} と定めると ι は単射で、E において (m, 1) + (n, 1) = (m + n, 1) および (m, 1) × (n, 1) = (mn, 1) が成り立つ(さらに ι(1) = 1/1 であるから ι は単位的環の準同型となる)から Z は ι によって演算まで込めて Q に埋め込まれる。そこで整数 m と剰余類 m/1 を同一視して Q は Z を含むものと考える。 以上の構成は、一般の整域の商体の構成にもほぼそのままに適用できる方法であり、したがって「Q は Z の商体である」などということができる。
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