商体の構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/21 06:12 UTC 版)
R は零因子を持たない、少なくとも一つの非零元 e を持つ可換環という意味での整域とする。R に対する分数全体の成す体 Quot(R) は以下のようにして得られる。 Quot(R) (の台集合)は、 R の元 n と R の非零元 d ≠ 0 からなる対 (n, d) の全体に 対 (n, d) が対 (m, b) と同値となるのは R の元として nb = md が成立するときであり、かつそのときに限る n d + m b = n b + m d b d {\displaystyle {\frac {n}{d}}+{\frac {m}{b}}={\frac {nb+md}{bd}}} n d ⋅ m b = m n b d {\displaystyle {\frac {n}{d}}\cdot {\frac {m}{b}}={\frac {mn}{bd}}} R → Quot ( R ) ; n ↦ ( n e , e ) {\displaystyle R\to {\text{Quot}}(R);\ n\mapsto (ne,e)} は環 R から環 Quot(R) への環としての埋め込みを与える(この埋め込みは非零元 e の取り方に依らずに定まることに注意)。もし R が乗法単位元 1 を持つならば (en, e) は (n, 1) と同値である。このとき、(e, e) の属する同値類 1 = e/e が環 Quot(R) における乗法単位元を与えることや、m, d がともに 0 でないとき (d, m) の属する同値類 d/m が同値類 m/d の逆元を与えることを確認することは容易い。したがって、Quot(R) は可換体である。 整域 R の商体は、 f: R → F が R から可換体 F への単射な環準同型ならば f の延長となる環準同型 g : Quot(R) → F が一意的に存在する という普遍性によって特徴付けられる。この商体の構成は圏論的に解釈することができる。C を整域と単射環準同型の成す圏とすれば、整域にその商体を対応させ、環準同型をそれが誘導する(普遍性によって存在の示される)可換体上の準同型に対応させる C から可換体の圏への函手は、可換体の圏から C への忘却函手の左随伴である。
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