演算子の体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/07 15:39 UTC 版)
「ミクシンスキーの演算子法」の記事における「演算子の体」の解説
重要なことは、先ほどの非単位的かつ結合的な可換代数が畳み込み積に関する零因子を持たないこと(ティッチマーシュの定理)である。これにより、代数学において一般に商体と呼ばれる構成を行うことができる。 L = F r a c ( C ) = { f g = f / g ∣ f , g ∈ C } . {\displaystyle {\mathcal {L}}=\mathrm {Frac} ({\mathcal {C}})=\left\{{\frac {f}{g}}=f/g\mid f,g\in {\mathcal {C}}\right\}.} 右辺で記号的に分数として f/g のように書いたものは、ここでの商体の構成に従った「畳み込み "∗" に関する商」となるべきものであって、他によくあるような、例えば値の商としてのもの(つまり、(f/g)(x) := f(x)/g(x) と定めるもの)とは異なるということに注意すべきである。 このようにして得られた体には、もともとの代数に属していた連続函数とともに、それ以外の、函数ですらないもの(しかし、台が下に有界なシュワルツ超函数としては解釈できる)がたくさん含まれることから、ミクシンスキーはこの体の元を operator と総称した(ミクシンスキー演算子)。特に、この演算子の体の元としての単位元 δ := l/l や(微分演算子であるべき、そして実際に微分演算子と呼ぶにふさわしい)積分演算子の逆元 s = δ/l の存在が、このような純代数的な方法によって論理的に保証される。 C ∋ α → [ α ] := s { α } = { α } / l ∈ L {\displaystyle \mathbb {C} \ni \alpha \to [\alpha ]:=s\{\alpha \}=\{\alpha \}/l\in {\mathcal {L}}} C ⊂ C ⊂ L . {\displaystyle \mathbb {C} \subset {\mathcal {C}}\subset {\mathcal {L}}.} また、台が下に有界な局所可積分函数の空間 L1loc(−∞,∞) を基にしても、その商体として同じ体 L {\displaystyle {\mathcal {L}}} が得られる。代数 C {\displaystyle {\mathcal {C}}} の元を負の部分では 0 となるものとして延長すれば、各函数は L1loc(−∞,∞) に入る。 商体がもとの代数を含む(最小の)体となることで、演算子の体による畳み込み代数への作用を、商体における積を考えることによって定められるかを問題にすることができる。 L ↷ C : L × C → C ( ⊂ L ) ; ( φ , f ) ↦ φ f . {\displaystyle {\mathcal {L}}\curvearrowright {\mathcal {C}}\colon {\mathcal {L}}\times {\mathcal {C}}\to {\mathcal {C}}(\subset {\mathcal {L}});\;(\varphi ,f)\mapsto \varphi f.} 特に、φ = li ∗ sj(i, j は自然数)に対する結果が確定するならば、微分積分学を展開するのにはさし当たって十分である。このような意味で、単位元 δ はディラックのデルタ函数を実現したものと理解される。
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