強化された無害通航
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 07:16 UTC 版)
「国際海峡」も参照 海上交通の要衝である国際海峡においては、伝統的に通常の領海におけるよりも緩和された通航が認められる「強化された無害通航」の制度が認められてきた。 1958年の領海及び接続水域に関する条約(領海条約)第16条第4項では、沿岸国は国際海峡における無害通航を停止することが認められず、平時には海峡の閉鎖などが禁止された(国際海峡でない領海においては領海条約第16条第3項により一定の条件下で停止権が認められる)。 「#沿岸国の規制権」も参照 こうした国際海峡の非閉鎖性は、1894年の万国国際法学会の領海の定義と地位に関する決議や1930年のハーグ国際法法典化会議準備委員会の報告書においてもすでに定められていた。また1947年のコルフ海峡事件判決(英語版)も認めたように、軍艦の通行も認められた。1982年の国連海洋法条約により領海の幅が12カイリまでとされたことにともない、多くの国際海峡がいずれかの国の領海とされることとなった。 しかし1973年から始められた第三次国連海洋法会議においては、大きな海軍力を持つアメリカ合衆国とソビエト連邦がこうした従来の「強化された無害通航」に否定的で、国際海峡においては公海なみの航行自由を認めるべきであると主張した。こうした主張に対してスペイン、モロッコ、インドネシアといった海峡を有する国々は反発し、国際海峡において厳格な無害通航制度の適用を主張した。この対立に対する打開策としてイギリスは通過通航制度を提唱した。 通過通航制度とは、「継続的かつ迅速な通過の目的のみのための航行及び上空飛行の自由」と定義され、無害性が通航の直接の基準とはされず、軍用機を含め上空飛行が認められたことが無害通航との違いである。1982年の国連海洋法条約では、この通過通航制度が定められ(第38条第2項)、それまでの「強化された無害通航」の制度が改められることとなった。
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