沿岸国の規制権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 07:16 UTC 版)
沿岸国は航行の安全、資源保護、汚染防止、関税・出入国管理のために必要な法令を制定することができ、安全確保に必要なときは航路帯や分離通航方式を採用することができるが、外国船舶に国際基準を上回る重い規制を課すことはできず、一方的に基準を超える厳しい基準を課せば部外通行を阻害することとなり国家責任を追及されることとなる(国連海洋法条約第21条、第22条)。内水に出入りせずに領海を通行する外国船舶が沿岸国の法令違反となる行為をした場合には一定の強制措置を実施する権限が沿岸国に認められるが、前述の国連海洋法条約第19条に規定される無害ではない通航に該当する場合を除き、通行権そのものを否定したり通航を阻害する結果となってはならない(国連海洋法条約第24条第2項)。無害ではない通航に該当する場合には、その通航を防止するために必要な措置をとることができ、軍事的安全保護のために不可欠な場合には特定海域において外国船舶の無害通航を一時停止することができる(国連海洋法条約第25条)。無害通航中の船舶内で起きた犯罪行為に対しては基本的に船舶の旗国が裁判管轄権を有するが、密輸、不法入国、汚染、安全保障に関する法令違反など、犯罪の結果が沿岸国に及ぶ場合、犯罪が沿岸国の平和、領海の秩序を乱すものである場合、船舶の船長や旗国の外交官・領事官から沿岸国に援助要請があった場合、麻薬・向精神薬不法取引の抑圧に必要な場合、これらの場合に限り沿岸国は捜査や逮捕などの刑事管轄権を行使することができる。ただしその場合にも沿岸国は犯罪の重大性と運航阻害の危険とをくらべ航行の利益に妥当な考慮を払わなければならない(国連海洋法条約第27条)。
※この「沿岸国の規制権」の解説は、「無害通航」の解説の一部です。
「沿岸国の規制権」を含む「無害通航」の記事については、「無害通航」の概要を参照ください。
- 沿岸国の規制権のページへのリンク