沿岸国の権限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 02:36 UTC 版)
接続水域で国家は通関、財政、出入国管理、衛生に関する法令の違反について防止や処罰を目的とした措置をとることができる。ただし国家の安全に対する侵害行為に対する規制は接続水域制度の対象には含まれていない。かつて国家の安全も接続水域制度の範疇に含めるべきとする主張も一部あったが、国家の安全という概念があいまいであることや、そのような事態に対しては通関・衛生上の国内法令や自衛権行使によって対処すべき場合が多いという理由で賛同を得られなかったためである。接続水域で沿岸国が外国船舶に対して規制を行うことができるのは、上記のような国内法令の違反が領土、内水、領海において行われることが事前に想定される場合にこれを予防するため、または、すでに領土、内水、領海で国内法令違反が実行された場合にこれを処罰するためである。 沿岸国の規制権のあり方について2つの異なる立場がある。(a)ひとつは、接続水域は本質的には公海であり、沿岸国が領海において国内法令違反船舶に対してしうるような拿捕や逮捕などといった強制措置を含めてはならず、検査や警告など予防的警察活動にとどめるべきとする立場である。(b)もうひとつは、目的が限定されている点を除いて沿岸国は領海と同様の排他的管轄権を有するため、目的の範囲内であれば拿捕や逮捕といった強制措置も行うことができるとする立場である。つまり争点は、外部から領海に向かってくる船舶に対して国内法令違反がいまだ発生していないにもかかわらず強制措置をとることができるか、という点である。一般的には(a)の立場が有利に解されており、規制対象船舶は領海や内水に侵入していない以上違反行為の実行の着手はまだ無いと見るべきであることから、関税賦課貨物の積み替えや徘徊、沿岸国の予防措置に対する実力行使に対して規制する場合を除き、沿岸国の権能は予防措置に留まり、強制措置まで含まれないといえる。
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