山ノ神のフジとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 文化 > 国指定文化財等データベース > 山ノ神のフジの意味・解説 

山ノ神のフジ


山ノ神のフジ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/04 09:19 UTC 版)

山ノ神のフジ。2021年5月7日撮影。

山ノ神のフジ(やまノかみのフジ)は、山梨県富士吉田市上暮地にある国の天然記念物に指定されたフジ(ノダフジ)の老木である[1][2][3]

日本国内に8件ある国の天然記念物に指定されたつる性樹木の1つである。山神社の境内に生育していることから「山ノ神のフジ」の名称がついており、1928年昭和3年)1月31日に国の天然記念物に指定された[1][2]。指定された当時は日本国内でも有数の大きさをもつフジであったが、台風の被害を受け樹勢が弱まり昔の面影はないと言われている[4]

解説

山ノ神の
フジ
山ノ神のフジの位置
山ノ神のフジ。花ぶざは短い。2021年5月7日撮影。

山ノ神のフジは、山梨県富士吉田市北部の上暮地(かみくれち)地区に鎮座する山神社の境内に生育する2本のノダフジである[3][5]。上暮地地区は富士吉田市の北隣の南都留郡西桂町との境界に近い同市の北端にあって、国の天然記念物に指定された1928年昭和3年)の時点では、西桂町の前身である西桂村大字上暮地であり、今日所属する富士吉田市へは1960年(昭和35年)に編入された経緯がある[6]。山ノ神のフジの生育する山神社は、御坂山地東部にある山梨百名山日本二百名山三つ峠南麓にあって、社殿のすぐ東を富士山麓電気鉄道富士急行線が通過している[4]

日本国内における野生のフジには、主に平地に広く見られるノダフジ Wisteria floribunda大阪市野田 (大阪市)に由来する)と、本州中部以西の山地に自生するヤマフジ Wisteria brachybotrysの2つがあり、いずれも観賞用として庭園などに植えられることがあるが、この2つはつるの巻き方が左右逆であり、また、品種により差があるものの、花序の長さもヤマフジは短いのに対してノダフジは長くなる傾向がある。国の天然記念物に指定された8件のつる性樹木のうち、フジ属の7件はすべて花序(花ぶさ)の長く垂れ下がるノダフジの系統である[4]

国の天然記念物に指定された山ノ神のフジは、山神社社殿北東の傾斜地にある株と、社殿北側にある株の2本であるが、指定された当時の1928年(昭和3年)頃には3本あって、同年に山梨県教育委員会によって刊行された『史蹟名勝天然記念物調査報告書第3輯』によれば、「その1本は最も巨大で根回り8尺3寸(約2.5メートル)、目通り幹囲6尺3寸(約1.9メートル)で、そばのイタヤカエデの大樹にまきついてさらに枝を広げて天然の藤棚をなしていた。花期には電車(富士山麓電気鉄道)から眺められ、その美しさは人々の目をうばった」と記されている[4]1958年(昭和33年)に発行された『植物文化財 天然記念物・植物』によれば「幹の北側に枯れ朽ちた部分がある[3]」と記述されているが、この枯れ朽ちたとされる等の痕跡も今日では消失している。

現存する2本のうち、社殿北東の傾斜地にある株はかつて根回りが3.1メートルもあって、隣接するスギに巻き付いて高さ約20メートルほどまで延びていたが、台風の被害によって樹勢が弱まってしまったため、今日みられるような鉄製の藤棚が1975年(昭和50年)に整備された。社殿北側の株は根回り2.5メートル、目通り幹囲2.2メール、根元から70センチのところで3本の枝に分かれ、8メートル上方へ延びた付近でイタヤカエデの大木に巻き付いている[7]

花房の長さは2つの株ともノダフジとしては短く、ほとんどの房(花序)が15センチほどに過ぎない[3][8]

正確な樹齢は明らかになっていないが相当の老木であり、また、本樹の希少性は老樹であるだけでなく、一般的にノダフジの巨木老木の多くは、人の手によって園芸的に植えられて成長したものであるのに対し、山ノ神のフジは自然に発生した野生のものであり[5]、野生のノダフジがここまで大きく成長したという点において珍しいと言える[3][8]

交通アクセス

所在地
  • 山梨県富士吉田市上暮地2114[7]
交通

脚注

  1. ^ a b 山ノ神のフジ(国指定文化財等データベース) 文化庁ウェブサイト、2021年5月14日閲覧。
  2. ^ a b 山ノ神のフジ(文化遺産オンライン) 文化庁ウェブサイト、2021年5月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e 本田(1957)、p.260。
  4. ^ a b c d 中沢敬止(1995)、p.524。
  5. ^ a b 中沢敬止(1995)、p.521。
  6. ^ 甲斐古文書研究会(1983)、p.142。
  7. ^ a b 山ノ神のフジ - 山梨の文化財ガイド(データベース)天然記念物 山梨県観光文化部文化振興・文化財課2021年5月14日閲覧。
  8. ^ a b 文化庁文化財保護部監修(1971)、p.167。

参考文献・資料

  • 加藤陸奥雄他監修・中沢敬止、1995年3月20日 第1刷発行、『日本の天然記念物』、講談社 ISBN 4-06-180589-4
  • 文化庁文化財保護部監修、1971年5月10日 初版発行、『天然記念物事典』、第一法規出版
  • 本田正次、1958年12月25日 初版発行、『植物文化財 天然記念物・植物』、東京大学理学部植物学教室内 本田正次教授還暦記念会
  • 甲斐古文書研究会 編集、1983年2月28日 初版発行、『各駅停車 全国歴史散歩 山梨県』、河出書房新社

関連項目

外部リンク

座標: 北緯35度30分58.0秒 東経138度49分49.4秒 / 北緯35.516111度 東経138.830389度 / 35.516111; 138.830389



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「山ノ神のフジ」の関連用語

山ノ神のフジのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



山ノ神のフジのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
文化庁文化庁
Copyright (c) 1997-2025 The Agency for Cultural Affairs, All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの山ノ神のフジ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS