展開と改革
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/05 02:19 UTC 版)
共通農業政策はEUの政策の中でも改革が難しい分野である。これは1960年代の政策の創設当初から今日に至るまで変わることがなかったものである。共通農業政策関連の意思決定機関は農業理事会(加盟国の農相による理事会)であるが、重要な政策の改革案件の票決にあたっては全会一致であることが求められており、可決されること自体がまれで、しかも段階的なものにとどまっていた。またEUの創設期以来、ブリュッセルでの協議の場の外では農業関係のロビー活動がEUの農業政策の決定に大きな影響を及ぼしてきた。このロビー活動の影響力が顕著に低下してきたのは1980年代以降のことである。 近年、EUでは対外貿易との兼ね合いや、消費者保護、環境保護といった政策との競合もあって、共通農業政策に変革が求められるようになっている。さらにはイギリスやデンマークなどでのEU懐疑論の立場から共通農業政策について、自国の経済にとって不利益を生じさせているとして批判が起こっている。 しかし、なおも共通農業政策を継続することはEUの政策において重要な狙いである。農業は「特別」であり、食糧生産、ひいては良質の食事をもたらすということはヨーロッパの共有財産であるという見方がなされ、この考え方は共通農業政策の堅持の論拠として挙げられている。農業はほかの産業とは違うもので、EUの精神、そして財政において大きな存在となっている。つまるところ戦後間もない時期の自給率や食糧備蓄の確保といった目的が今日もなお続いているのである。
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