小売の輪
米国ハーバード・ビジネス・スクールの名誉教授M.P.マクネアが、1957年、『マーケティングの諸問題』のなかで「小売の輪」として、小売形態の変遷をライフサイクルの視点から説明した理論。その著書でつぎのように書いている。「競争の激しいわが国の高水準経済において、流通部門で何が起きているのか。現在生じている小売形態の変化の原動力は何なのか。私が思うには、米国の流通には多かれ少なかれ、明白なサイクルが存在するようである。サイクルは大胆で斬新なコンセプト、つまり革新で始まる。誰かがいままでにない斬新なすばらしいアイデアを思いつく。ジョウン・ワナメーカー、ジョージ・ハートフォード、フランク・ウールワース、W.T.グランド、ミッチェル・カレン、それにユージン・ファーカウフといった人々である。このような革新者は新しい種類の流通企業のアイデアをもっている。 当初、革新者に対する評価は低く、嘲笑の的となり、軽蔑され、正当ではない異端児として非難される。しかし革新者はその革新固有の低い営業費によって可能となった価格訴求をベースに大衆を引きつける。後になるにつれて次第に革新者は格上げを行い、より高品質の商品を取り扱い、店舗の外観と店格を高め、より高い社会的地位を得ていく。そのころ、その小売形態は、成熟段階にはいる。建物を含む物理的施設が巨大化し、店舗の設備と陳列は洗練されたものとなり、より大々的な販売促進努力が展開される。成熟段階はまもなく過大資本化、保守化の進行、投下資本利益率の低下、ひいては抵抗力の弱体化を伴うようになる。」つまり、価格訴求の革新者が現れ、その成功が品揃え訴求に進展、そしてサービス訴求、つぎの新たな価格訴求者というように小売業態が輪のようにまわることを唱えたもの。
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