天然原子炉の仕組み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:36 UTC 版)
「オクロの天然原子炉」の記事における「天然原子炉の仕組み」の解説
天然原子炉では、ウランに富んだ鉱床に地下水が染み込んで、水が中性子減速材として機能することで核分裂反応が起こる。核分裂反応による熱で地下水が沸騰して無くなると反応が減速して停止する。鉱床の温度が冷えて、短命の核分裂生成物が崩壊したあと、地下水が染み込むと、また同じサイクルを繰り返す。このような核分裂反応は、連鎖反応ができなくなるまで数十万年にわたって続いた。 ウランの核分裂では、5種類のキセノンガスの同位体が生成される。ガボンでは5種類すべての同位体が天然原子炉の痕跡から発見されている。鉱床のキセノンガスの同位体比を調べることで、20億年たった現在でも核分裂サイクルの周期を知ることができる。計算ではおよそ30分活動したあと2時間30分休止するサイクルだった。 天然原子炉が臨界に達することができた理由は、天然原子炉があった当時、天然ウランの核分裂性同位体235Uの濃度が3%と、現在の原子炉とほぼ変わらなかったからである(残りの97%は核分裂性物質ではない238U)。235Uの半減期は238Uより短く、より早く崩壊してしまうので、天然ウランの現在の235Uの比は0.72%に低下していて、地球上ではもはや天然原子炉は存在しえない。 オクロ以外では天然原子炉は見つかっていない。ほかのウラン鉱床も核分裂反応を起こすのに十分なウランが含まれていたものの、ウランと水と、核反応を起こすための物理的な条件とがそろっていたのはオクロのユニークな点だったと思われる。 オクロの天然原子炉が20億年より前の時点で反応を開始しなかった理由は、おそらく大気中の酸素濃度の上昇が関連している。ウランは地球の岩石中に自然に存在していて、核分裂性物質の235Uの濃度は臨界に達する前は常に3%以上だったはずである。しかし、ウランは酸素存在下でしか水に溶けない。大気中の酸素レベルが上昇するにしたがって、ウランが地下水に溶けて運ばれて、ウランが十分に濃縮された鉱床を形成したと考えられる。大気の環境がもし変化していなければ、そのような濃縮はおそらく起こり得なかった。 ウラン鉱床の中の数センチメートルから数メートル程度の天然原子炉が、およそ5トンの235Uを消費して、数百度の温度に達したと考えられている。不揮発性の核分裂生成物とアクチノイドは、20億年間で鉱床中を数センチメートルしか移動していない。放射性廃棄物の地層処分に関連して、地下水とともに放射性物質が環境中に流出する懸念について激しい議論があるが、ガボンは放射性同位体が地殻の中でどう動くかについてのケーススタディになっている。
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