多細胞体制の発達
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/25 16:27 UTC 版)
単細胞生物は一細胞が一個体であり、細胞分裂がそのまま個体の増加につながるのに対し、多細胞生物の有性生殖では生殖細胞のみが次世代に引き継がれる。個体の増殖速度は単細胞生物の方が早く、短時間での繁殖には有利であるが、多細胞生物は細胞を専門化させ複雑な機能を獲得することにより生存を有利にする戦略をとってきた。 生物は進化の過程において複数回にわたって多細胞体制を獲得してきた。動物、菌類、植物はそれぞれ独立に多細胞化したと考えられている。比較的最近になって多細胞化した生物としては群体ボルボックスが知られている。化石の記録によると最初の多細胞生物は約10億年前に誕生したとされており、生物の誕生が35億年前であるから、多細胞化には25億年近くを必要としたことになる(地質時代参照)。多細胞化においては細胞同士の接着や、周りの細胞との協調が必要とされることから細胞間での情報伝達(シグナル伝達)が発達する必要があり、単細胞真核生物にこれらの機能が備わるまでに時間がかかったと考えられている。 よく発達した多細胞体制の生物は様々な種類の細胞からなっているが、有性生殖においては、受精卵と呼ばれる一つの細胞に始まる。受精卵から成熟した個体になる過程を個体発生と呼び、元の細胞から異なる細胞が生じることを分化と呼ぶ。ただし種々に分化した細胞においても基本的にゲノムは同一であり、すべての細胞は同一の遺伝情報をもっている。これは遺伝子発現やクロマチン状態の違いに依存している。ただし哺乳類の獲得免疫における抗体産生細胞や、線形動物ウマノカイチュウの体細胞などではゲノムの変化が起こることが知られている。
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