多様な方言を用いた啓示
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 21:54 UTC 版)
「ウスマーン版ムスハフ (冊子本)」の記事における「多様な方言を用いた啓示」の解説
歴史的に見ると、ムスハフは、神がかりの状態になった人間が、恍惚状態のなかで口走った言葉を書物にしたものである。啓示をしたのは誰か、ということについて、客観的にはっきりしたことを証明することはできない。それは、知ることのできない何者かが為したことである、とする見解がある。啓示全体が下された20年余りの時期を、三期に分ける研究の仕方が一般的であるとされている。最初期の啓示の文体は、荘厳で詩的なものであった。それは、シャーマンや巫者が用いるところの、「カーヒン」と呼ばれる、神霊的言語形式であったとする見解がある。啓示してくる霊的存在のなすがままに、ムハンマドは、異様な言葉を吐くという状況であったとされる。激しい苦痛と苦悩のうちにそれは行われた。。最初期の時代の啓示には、神の威厳が大変強く現れているとされている。宗教的緊張感を伴った、これらの神的な啓示は、最初期の時期に特有のものであるとされている。しかし、やがて、メディナ期になると、ムハンマドの問題提起に応じて、神の「お答」が下されるという、弛緩して身体的にもゆるやかな散文形式の啓示となったとされる。 啓示が下された当時、それらの啓示がすべて神よりもたらされたものと判断したのは、ムハンマドである。ほとんど場合、彼の自己意識は喪失した状態で、神の言葉を口が勝手に語る、という状態だったようだ。しかし、ムハンマドは霊の声を聴くことはできたが、霊を見ることは時々しかできなかったようだ。はじめて啓示が下されたとき、彼は自分が悪霊につかれたものと判断した。それが神よりの啓示であると直感したのは、彼の妻であった。 ムハンマドが生前に語った言葉として、クルアーンは七種類の方言で語られたという見解がある。また、クルアーンの啓示の中には、当時のアラブ商人の言い回しと商売用語を使う場合もある。そのほかに、章の始めに意味不明な頭字を使用している啓示もある。 トランス状態になった時に、ムハンマドに啓示の下ることが多いようであるが、トランス状態になっても、啓示の降りないときもあったとされる。 また、ムハンマドの意識が残ったままで下されるという特色を持った初期の啓示もある。そのように、神の啓示は、時代を経るごとに複雑になっていった。そうした複雑な神の啓示を、時代ごとに分類するのではなく、いろんな時代の啓示を一つの章にごちゃごちゃにしてある。そのように編集してあるのが、ウスマーン版ムスハフであると言える。
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