多様な生業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 20:13 UTC 版)
実際の村落には多様な生業を持つ者が住んでいた。百姓=農民というイメージは江戸時代から続く古い俗説であるが、実際には現代の「兼業農家」よりも広い生業を含んでいる。 諸職人大工・鍛冶は、職人身分に属する者が営む場合、水呑・借家あるいは百姓が営む場合、があった。 木挽・屋根屋・左官・髪結い・畳屋は、水呑・借家あるいは百姓が営んだ。 宗教者神職:江戸時代においては、吉田家と白川家(伯家)が本所として全国の神社・神職を配下にしようと争奪しあう状況にあった。しかし、幕末に至っても両家による全国編成は完了せず、百姓身分のまま神職を勤める「百姓神主」がかなりの割合で存在していた。神職身分を獲得したい百姓神主と百姓身分に留めたい村落側との意向が異なる場合があり、百姓神主と村落とが裁判を繰り返すこともあった。その一方で、本所の配下になることを忌避する百姓神主も存在した。 僧侶:すべて僧侶身分である。 修験 雑芸民 医者:水呑・借家あるいは百姓が営むことが多かった。しかし、領主との関係、あるいは出自などの由緒によって「浪人」として扱われる場合もあった。 商人:水呑・借家あるいは百姓が営んだ。江戸時代には商人身分は存在せず、士農工商の「商」は町人を指した。 漁民:水呑・借家あるいは百姓が営んだ。江戸時代には「漁民」身分は成立しなかった。 以上のように、村落にはさまざまな生業で生計を立てている者たちが存在していた。彼らがどの身分集団に属するのかは、身分集団を編成する本所の動向、身分集団自体の成熟度に左右されることがわかる。その生業の種類とともに、時期と地域による差も大きかったのである。
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