変格もの、スパイ小説とサスペンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 00:09 UTC 版)
「推理小説」の記事における「変格もの、スパイ小説とサスペンス」の解説
「本格」に対して、「変格」といわれる作品の一つが、パトリシア・マガーの「被害者を捜せ!」「探偵を捜せ!」等の、犯人はわかっていて被害者・探偵・目撃者などを推理させるといった、推理小説の枠にとどまらないユニークな形式(変格推理)の長編作品である。マガーは女スパイを主人公にした「セレナ・ミード」ものも著名で映画にもなっている。スパイものでは「ジェームズ・ボンド」シリーズのイアン・フレミングが有名だが、他にエリック・アンブラーの「ディミトリオスの棺」やフレデリック・フォーサイスによる「ジャッカルの日」、グレアム・グリーン「ハバナの男」、ほか多数の日本語訳がある。 さらに、トリックや謎解きよりも主人公や登場人物の心理描写に重点を置く「サスペンス」の作品をコーネル・ウールリッチが多数発表。代表作がウィリアム・アイリッシュ名義の長編「幻の女」で、冒頭の書き出しも有名である。短編「裏窓」は映画の原作に採用された。 パトリック・クェンティンのウェッブ主導の初期作品は本格色が強かったが、コンビのうちホイーラー中心の後期はサスペンス色が濃くなった。ルース・レンデルも「ウェクスフォード警部」シリーズの本格推理と、バーバラ・ヴァイン名義でのサスペンスの両系統で傑作群 を発表した。 フランスではボワロー=ナルスジャックやカトリーヌ・アルレー、セバスチアン・ジャプリゾなどが「サスペンス」ものを多く発表している。 ジョセフィン・テイは女性の心理描写に長けた作家だが、「時の娘」において舞台は現代ながら探偵役が病院のベッドの上で、文献のみから歴史上の事件を解決する手法を採っている。彼女と混同されがちな「病院殺人事件」など、医療ミステリのジョセフィン・ベル(Josephine Bell )は、イギリス推理作家協会(CCA)の創立当初からのメンバーであり、会長職も務めた。アンドリュウ・ガーヴ(Andrew Garve )は謎解き・冒険・警察ものと多彩な作風を使い分けるが、「ヒルダよ眠れ」からはサスペンス基調の作品が多くなった。
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