堆肥の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/21 14:05 UTC 版)
堆肥由来の雑草・害虫・病原菌の問題 家畜ふん堆肥に求められる安全性や品質に、堆肥由来の雑草・害虫・病原菌の問題がないことが挙げられる。材料が雑草そのものである場合、堆肥化の過程で雑草種子が生き残ることがある場合がある。また、家畜糞が材料である場合、飼料中に混入している雑草種子が生存している可能性がある。雑草種子が生きている堆肥を施用した場合、圃場に雑草が繁茂する原因になる。家畜ふん堆肥のポイントとして堆肥化時に発酵温度が60℃以上が2日以上維持されていたことが目安とされている。 散布時の悪臭の問題 散布時の悪臭を防ぐため、未熟な堆肥を避けたり、乾燥しすぎず粉塵の少ない堆肥を用いることが好ましい。 未熟堆肥による障害 未熟な堆肥を施肥すると様々な障害を及ぼす恐れがある。窒素飢餓-堆肥の成分は、炭素と窒素の割合(C/N比)で評価される。未熟な堆肥は、炭素成分の分解が完全ではないため、土壌中に窒素飢餓を及ぼす恐れがある。 酸素障害-易分解性の有機物が完全に分解されていない堆肥を施肥すると、土壌中で有機物の分解が起こり酸素障害が作物の根や土壌生態系に大きな打撃を与える。 重金属問題 重金属類の濃度が低いものを用いる。 カリウムの放出 カリウムは、細胞中にイオンの形で存在する。そのため、生物が死ぬと細胞からカリウムは容易に溶出する。これは、様々な有機物に取り込まれている窒素とは大きく違う点である。窒素のみに注目すると、堆肥は緩効性肥料であるが、カリウムのみに注目すると、堆肥は速効性肥料である。そのため、堆肥の施用量は、堆肥に含まれているカリウムの量に制限される。しかし、通常、堆肥だけを肥料とすることは行われない(堆肥だけを肥料とすると、窒素成分が不足するからである)。そのため、カリウム過剰が発生しやすくなる。 なお、堆肥を数年雨ざらしにしておくことで、カリウムは雨に溶けて流亡する。このような堆肥を施用してもカリウム過剰にはならない。但し、堆肥から流れたカリウムが地下水汚染につながることもある。なお、日本では一定規模の畜産農家が堆肥を雨ざらしの状態で積んでおくことは、家畜排せつ物法によって禁止されている。 抗生物質 動物用の医薬品が家畜に投与された時の排泄物は、抗生物質が含まれている。この抗生物質入りの排泄物で作った堆肥の安全性はまだ明らかにされていない。 オガクズ堆肥 オガクズには作物に悪影響を与えるフェノール性酸が含まれるため、これを問題視する声がある。しかし、十分に堆肥化を行えば、障害は起こらないとの報告もある。 塩類問題 生ゴミ、家畜ふんには塩分が含まれる。そのため、作物に塩類濃度障害が起こる可能性が指摘されている。
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