国際紛争の事例と解決手段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 15:11 UTC 版)
「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」の記事における「国際紛争の事例と解決手段」の解説
現実に起こった紛争事例として、「全米作家協会他対Google裁判」を紹介する。本件では、Googleブックスが世界中の書籍を無断でデジタルスキャンしてインターネット上に公開していたことから、米国の著作権擁護団体などが2005年、米国・ニューヨークで集団訴訟を申し立てた事件である。本件を担当する米国の裁判所が、米国著作権法に準拠して著作権者とGoogleの和解を取り持つことで、逆にGoogleの電子書籍市場における独占が強まり、米国外の市場にまで影響を及ぼすことが懸念された。これを受け、フランスやドイツの政府当局が米国の裁判所に対し、和解案を棄却するよう意見書を提出する事態へと発展した。 このような国家間の紛争に発展しうるケースを、ベルヌ条約はどのように想定しているか。1971年の第6回パリ改正により第33条が追加され、紛争当事国が国際司法裁判所へ付託することができると規定された。また、著作権の姉妹にあたる特許権などの産業財産権も同様に、パリ条約にて国際司法裁判所への付託が定められている。しかしながらこれらの規定が整備されてから30年以上の間、著作権に限らず全ての知的財産に関して、国際司法裁判所に付託された紛争は1件もない。その理由として、国際司法裁判所が必ずしも知的財産権に詳しい専門家を配置しているわけではないことに加え、各国が私人間の紛争を国際司法裁判所に付託することに慎重な態度をとってきたことが考えられる。 この紛争解決能力の弱さは、TRIPS協定によって補完されている。TRIPS協定は世界貿易機関 (WTO) 設立の際に定められた条約であり、WTO加盟国間で紛争が発生した場合、WTOの紛争処理機関に解決を付託することができる。TRIPS協定では具体的に、差止命令や損害賠償などの救済方法に関する規定 (第44条 - 第46条)、侵害に対する暫定措置の保障 (第50条)、国境措置に関する特別要件 (第51条 - 第60条) などが設けられている。そして、実際にWTOの紛争処理機関に持ち込まれた知的財産関連の紛争件数は、1996年から2000年の間に計23件、2001年から2007年の間に計3件となっている。
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