国際式等級システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 04:33 UTC 版)
「等級 (天文)」の記事における「国際式等級システム」の解説
国際式等級は、国際写真等級 (International Photographic Magnitude, IPg) と国際写真実視等級 (International Photovisual Magnitude, IPv) を含む測光システムである。19世紀後半から20世紀前半にかけては、星の等級を客観的に測定するには、その当時の技術としては写真術を利用するのが一番適当であった。写真乳剤は、生のハロゲン化銀では、感度のある波長は青から紫といった波長の短い範囲に限られていて、そのまま写真で星の等級を測定(写真等級、Pg)しても、肉眼で測定された実視等級とは系統的に違いが生じる。そのため、波長の長い方に感度を持つ乳剤と黄色フィルターを用いて実視等級を測定した。これを写真実視等級 (Pv) と呼ぶ。赤い星は、写真等級の方が写真実視等級よりも暗く(数字は大きく)、青い星は写真等級の方が写真実視等級よりも明るく(数字は小さく)なる。したがって、写真等級と写真実視等級の違いを利用して、星の色を表すことができる。この、写真等級 - 写真実視等級で求められた数値を色指数と呼び、恒星の色や表面温度の計測に用いられるようになった。 1922年の第1回IAU総会では、リービットが作成した96個のNPSの星の等級が国際写真実視等級 (IPv) と国際写真等級 (IPg) として定められた。NPSは、それまでにも天文台が多かった北半球で天文台間の測定値のばらつきを避けるために共通の星野として利用されていた実績があった。写真乳剤にも様々な感度特性を持つものがあったため、 国際写真等級IPgは、Seed 27乾板で撮影 国際写真実視等級IPvはCramer Instantaneous Iso乾板に黄色フィルターを使って撮影 するものと定められた。 しかし、やがて写真実視等級には次のような主に2つの問題があることがジョンソンの指摘により判明してきたため、使用されなくなった。 北極標準星野は星間赤化を受けている太陽系から見た北極方向には星間物質があり、それよりも遠きにあるすべての星の光は赤化を受けていて、色指数で0.1等ほど大きくなっている。そのために、北極標準星野を利用した測光システムでは、星間赤化の影響を受けないスペクトル型と色指数の間の関係がくずれる。 写真等級の感度範囲に水素バルマー線がたてこむ波長域の両側を含んでいて、しかも北極標準星野はO型B型の高温度星をほとんど含んでいない写真乳剤の感度は、ちょうど水素バルマー線がたてこむ領域(バルマーリミット)の両側の波長域を含んでいるが、水素バルマー線が立て込んでいない波長域(青色光側)と立て込んだバルマー端に近い波長域(紫外側)を分離して測定しなければ、特に高温度星の等級測定において不都合が生じる。高温度星では、バルマーリミットの短波長側(紫外側)でその星の大気により大きく吸収を受けているが、低温度星ではそのようなことはない。このため、高温度星をほとんど含んでいない北極標準星野で定義された測光システムでは、各天文台で測定がばらつくことがわかった。北極星野内では0.04等ほどの範囲で一致してもその他の星野でO型星を測ると0.4等もの違いが生じ得る。 そこでジョンソンは、赤化の影響を受けていない国際写真実視等級はそのままV等級として引き継ぎ、赤化の影響を受けた写真等級を、バルマーリミットの短波長側(紫外側)のUバンドと長波長側(青色光側)のBバンドに分けることを提唱した。これが次のジョンソンのUBVシステムである。
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