営巣、卵、胚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/08 04:08 UTC 版)
少なくとも4体の抱卵姿勢の標本が発見されており、最も有名な「Big Auntie」という愛称のついた標本は1995年に初めて報告され(しかしまだ命名されていなかった)、1999年に記載され 、2001年にキチパチ属に分類された。全ての営巣標本は卵の上に位置し、四肢は巣の各側に対称に広げられ、前肢が巣の周囲を覆っていた。この抱卵姿勢は現在では鳥類のみに見られ、鳥類と獣脚類恐竜との行動上の結びつきを支持している。またキチパチの営巣姿勢はキチパチや他のオヴィラプトル類の前肢には羽毛があったことという仮説を支持する。巣の外周に沿うように腕を広げているので、もしこの動物が羽毛で覆われていないのであれば卵のほとんどは体で覆われていないことになってしまう。 化石化した恐竜の卵は珍しいものの、キチパチなどのオヴィラプトル科の卵は一般的で、比較的よく発見されている。4体知られている営巣する標本の他に、ゴビ砂漠では多数の孤立したオヴィラプトル科の巣が数十個発見されている。キチパチの卵は細長い楕円形の形状(elongatoolithidという学名がつけられている)で質感と殻の構造が平胸類のものに似ている。キチパチの巣では一般的に卵が最大で三層の同心円状に並び、一腹の卵は全部で22個ほどだった。卵は18cmで、同定されているオヴィラプトル科のものとしては最大である。対照的に、オヴィラプトルの卵は最大でも長さ14cmである。 皮肉にも、オヴィラプトル科は卵に関連した名前が与えられた(「卵泥棒」の意味)最初のオヴィラプトル科の卵(オヴィラプトルの卵)は角竜類恐竜のプロトケラトプスの化石のすぐ近くで発見され、オヴィラプトルは角竜の卵を獲物にしていたと想定された。この誤りは1993年にプロトケラトプスの卵のタイプ標本とされたものの中からキチパチの胚が発見されるまで修正されなかった。 ノレルらはこの胚がオヴィラプトル科のものであることに気づき、キチパチのみに見つかっている特長である垂直に配向した前上顎骨(上顎の先端の骨)に基づいて2001年にキチパチ属に分類した。胚を含んでいた卵の化石は部分的に侵食されて3片に壊れており、元々の大きさを正確に推定することは困難であるものの、既知の多くのキチパチの卵より小さく13cmである。胚を含む卵の化石は卵の殻の構造に関しては他のオヴィラプトル科のものと同じで、孤立した巣に円状に並んでいた。 ビロノサウルス(Byronosaurus)の非常に幼い個体や胚の頭骨が最初のキチパチの胚が発見された同じ巣に関連して発見された。このとても小さなトロオドン類はキチパチに捕食されていた可能性がある。ノレルは幼体のトロオドン類がキチパチの巣に侵入したか、あるいは托卵するために大人のビロノサウルスが巣に卵を置いた可能性すらあるとした。
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