化石節足動物との関係性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:29 UTC 版)
節足動物 †ラディオドンタ類 真節足動物 大顎類 多足類、甲殻類、六脚類など †Artiopoda 三葉虫類 、光楯類 など ? †メガケイラ類 鋏角類 ウミグモ類 †サンクタカリス †ハベリア †モリソニア 真鋏角類 †オファコルス †ダイバステリウム †ハラフシカブトガニ類(側系統群) 狭義のカブトガニ類 †カスマタスピス類 †ウミサソリ類 クモガタ類 現生鋏角類の分類群(太字)といくつかの化石節足動物(†)の系統関係。姉妹群関係が不確実のものは複数分岐としてまとめられる。 鋏角類はおよそ5億年前の古生代カンブリア紀に起源と考えられ、基盤的な鋏角類とされるカンブリア紀の化石節足動物は、主にメガケイラ類(Megacheira, 大付属肢節足動物)、ハベリア類(ハベリア目 Habeliida)、およびモリソニア類(モリソニア目 Mollisoniida)が挙げられる。メガケイラ類は鋏角類に似た中枢神経系、退化的な上唇、および鋏角を彷彿とさせる構造の大付属肢があり、後述の群ほど確定的ではないが、これらの性質で類縁関係を示唆される。サンクタカリスやハベリアなどを含んだハベリア類は、再検討により鋏角類の体制をもつことが判明し、前体の付属肢には基盤的な真鋏角類であるオファコルスやダイバステリウムに似た外肢もある。しかし、これらの節足動物は鋏角に相同と思われる付属肢をもつものの、そのいずれも確実に鋏角といえるほどの構造ではなかった。モリソニア類のモリソニアは、真の鋏角をもつことが認められる初のカンブリア紀節足動物で、真鋏角類的な中枢神経系と書鰓を彷彿とさせる構造も兼ね備えていた。 詳細は「Megacheira」、「ハベリア」、および「モリソニア」を参照 様々なメガケイラ類 ハベリア モリソニア それ以外の化石節足動物との系統関係については、三葉虫類(Trilobita)などの節足動物を含んた分類群三葉形類(Trilobitomorpha)に類縁で、Arachnomorphaを構成する説は、20世紀においては主流であった、これは主にカブトガニ類と三葉形類の類似点(幅広い背甲・後体/胸部の三葉構造・平板状の蓋板/外肢・顎基をもつ前体/頭部付属肢など)が根拠とされ、その中で鋏角類は三葉形類から派生するという考えもあった。同時に光楯類(Aglaspidida)は、鋏角類のように頭部(前体)に鋏角を含めて6対の付属肢をもつと解釈され、節口類の鋏角類と考えられた。また、三葉形類は触角をもつため、鋏角類は三葉形類らしき共通祖先から派生する過程で、触角(およびそれをもつ第1体節)を二次的に退化したと考えられ、ケロニエロンなど一部の化石節足動物が、その中間型生物ともされてきた。 しかし、20世紀後期の研究を始めとして、光楯類は鋏角類でない(頭部の付属肢は4-5対しかなく、最初の付属肢は鋏角ではなく触角である)ことが徐々に判明し(光楯類#分類を参照)、90年代以降では鋏角類の鋏角は第1体節由来で、他の節足動物の第1触角に相同であることも分かり(前述参照)、三葉形類との類似点もカブトガニ類以外の鋏角類に対応できず、類縁関係を示唆する根拠として疑わしく見受けられるようになった。これにより、前述の一連の系統仮説はほぼ無効化され、新たな基準で見直さなければならない。 21世紀以降では、三葉形類と光楯類はまとめてArtiopoda類に分類されるようになり、その中で根拠は20世紀と多少異なりながら、Arachnomorpha説(鋏角類+Artiopoda類)を支持する研究はいくつかある。しかしこれは確実でなく、代わりにArtiopoda類と大顎類の類縁関係(Antennulata説)を支持する研究も少なからぬ挙げられる。 節足動物 大顎類 多足類、甲殻類、六脚類など Arachnomorpha †Artiopoda 三葉虫類、光楯類など 鋏角類 節足動物 Antennulata 大顎類 多足類、甲殻類、六脚類など †Artiopoda 三葉虫類、光楯類など 鋏角類 節足動物と考えられるラディオドンタ類(Radiodonta、アノマロカリスなどを含む群)は、メガケイラ類と鋏角類のように、口の前に第1触角の代わりに捕獲用の附属肢(前部付属肢)があるため、両者に類縁と考えられることもあった。そこで、初期の節足動物の中で鋏角類に至る系統群はまず前端の付属肢を捕獲用に特化し、ラディオドンタ類の前部付属肢はメガケイラ類の大付属肢に、大付属肢は鋏角類の鋏角に進化するという説が提唱された。しかし、ラディオドンタ類の多くの祖先形質や神経解剖学的証拠はこのような系統仮説を支持しなかった。メガケイラ類と鋏角類は真節足動物であり、それぞれの大付属肢と鋏角は、他の節足動物の第1触角と同様に中大脳性(第1体節由来)であるのに対して、ラディオドンタ類は真節足動物より早期に分岐した基盤的な節足動物として広く認められ、その前部付属肢も前大脳性(先節由来)で、別起源の可能性が示される。 詳細は「ラディオドンタ類#系統関係」および「Megacheira#系統位置」を参照
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