力の保存
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/02/21 00:42 UTC 版)
「ユリウス・ロベルト・フォン・マイヤー」の記事における「力の保存」の解説
マイヤーは、物体の運動や熱、電気といった現象の原因となるものを考え、それを「力」と呼んだ。そして、その「力」の量は常に一定であり、消滅することはないと主張した。 1842年に発表された論文では、このことを次のように表現した。 力は原因である、したがって、原因は結果に等しいという根本原理が完全に適用される。原因cが結果eを持てばc=eであり、そのeがまた別の結果fの原因ならばe=fであり、という具合にしてc=e=f=・・・=cである。原因と結果の連鎖においては、等式の性質から明らかなように、一つの項あるいはいくつかの項(だけ)が零になることはできない。あらゆる原因が持つこの第一の属性を、われわれは原因の不滅性と名づける。 — マイヤー、生命なき自然界における力についての考察 マイヤーはさらに力の特性として、この不滅性の他に、転換可換性、不可秤量性を挙げた。転換可換性とは、ある力が別の力に変わり得るということを意味する。また、不可秤量性とは、力は物質と違って重さを持たないということを意味する。 ここでマイヤーが表した「力」は、現在のエネルギーの概念に近い。マイヤーは、「力」の1つである運動の力として、1841年の論文ではmv(現代でいう運動量)、1842年の論文ではmv2、1845年の論文ではmv2/2(現代でいう運動エネルギー)を当てた。マイヤーの主張(力の不滅性)を運動の力に当てはめれば、力学的エネルギー保存則が導き出せる。 マイヤーはこのように、「力」は保存されるものと定義したが、現実には、動いている物体の「運動の力」が、他の物体の運動の力に伝わることなく止まってしまうことがよくある。マイヤーは力の保存則を成り立たせるには、この現象では、運動は熱へと変化したととらえればよいと考えた。 このようにマイヤーは熱と運動の関係性に着目したが、一方で、現在知られているような、熱とは(分子の)運動であるという考えには反対した。1842年の論文では「運動が熱になるには、運動は―単純な運動であれ、光や放射熱などのように振動運動であれ―運動であることを止めねばならない」と主張し、1850年の論文においても同様の見解を示した。運動も熱も「力」であり、互いに変換可能であるが、それは質的には別個のものだととらえたのである。 そして、一定の量の熱を生み出すには、どれだけの運動が必要になるかを考えた。これは現在でいう熱の仕事当量にあたる。
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