制度の実態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/14 09:54 UTC 版)
「信託型従業員持ち株制度」の記事における「制度の実態」の解説
現在は、信託を用いる形態が主流となっているが、最初に日本版ESOPを謳って導入されたスキームは、信託ではなく中間法人を用いて株式プールをつくるものであり、現在流行しているスキームのように、残存株式の売却代金を従業員に分配するものではなく、この代金について会社が受領するものであったが、実態と効果はほとんど同じである。 ESOPが安定継続的な会社制度として運営されるのに対して、一時的(漸減しながら3年から5年程度で終了)なものであること、ESOPでは会社が自社の株式の市場価格変動リスクを負わないのに対して、会社が損失を負担すること、ESOPが従業員の私有財産に雇用者会社株式を無償で付与するのに対して、従業員の私有財産の拠出により雇用者会社株式の購入をさせるものであるなど、ESOPとは、目的も効用も異なるものである。 米国においては、従業員が自らの拠出によって雇用者株式を購入する場合の補助的な制度として、423ESPPs(Employee Stock Purchase Plans:従業員株式購入制度)と401(k)確定拠出型年金プランにおける雇用者株式購入部分がある。423ESPPsは、購入代金を給与天引きでき、1年半程度の勧誘期間中の株価の最安値から15%程度のディスカウントを与えて、従業員による株式購入を促すことができる。日本の従業員持株会に相当する制度であるが、全額会社負担であるESOPに比べて魅力的でないと言われている。また、401(k)プランは、ESOPと同様の年金形式でありながら会社負担が軽減できることから、一時ESOPからの転換が進んだが、エンロン事件等の教訓から拠出額の上限規制など従業員への自社株投資勧誘が抑制される方向で制度運用が厳格化されている。 このように見てみると、信託型従業員持ち株制度が「米国ESOPのスキームを参考につくられたインセンティブプラン」などと説明されることがあるが、米国のESOPが禁止している従業員による拠出を前提とするなど、ESOPの主旨に反する点が多く、反面どこに共通点があるのか不明であり、ESOPが持ち出される理由も不明であるだけでなく、誤った導入誘因となる危険性が高い。また、エンロン事件など、従業員による株式購入を推奨することで悲劇が拡大した米国での経営陣による不正事件の教訓が活かされていないということができる。また、スキーム導入後に株価が下落すれば会社も従業員も共に損失を蒙るが、スキームを提供する金融機関は、会社の保証によって利益が確定されていることから、「利益は私のもの、損失は顧客のもの」というウォール・ストリート流のグリーディズムさながらであると揶揄される。
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