初期の認知神経科学研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 05:05 UTC 版)
「ジーン・ディセティ」の記事における「初期の認知神経科学研究」の解説
博士課程期間中から学位取得後にかけて、ディセティ博士は、行動学、生理学、機能的脳画像の3つの指標を組み合わせ、運動の心的シミュレーションに関わる認知機能・神経基盤を研究した。具体的には、運動選手がパフォーマンスを熟達・向上させるために用いる、運動の心的訓練や運動イメージについて研究した。一連の実験から、心的シミュレーションは、実際の運動時と同程度に心臓と呼吸の制御メカニズムを活動させることを明らかにした。さらに、運動をイメージする場合も実際に運動を行う場合も、共通する神経回路(運動前野、補足運動野、小脳、頭頂葉、大脳基底核)が賦活し、この神経回路は他者が行う運動を観察、模倣、イメージすることによっても活性化する。 これらの結果は、ロジャー・スペリーが提唱し、さらに最近ではドイツの心理学者ウォルフガング・プリンツがさらに展開した、知覚と行為間の共通符号化理論を支持するものである。この理論の核心となる仮説とは、行為は、それによって生じる知覚効果(すなわち、距離を置いた知覚現象)としてコード化されるという理論である。動作を行うと、運動そのものがもたらす運動パターンと運動により生じる感覚効果が双方向性に関連している事実は一旦置き去りになる。動作を再生する際に、これらの関連性が必要となる。ディセティ博士らは、この知覚と行為の連結機能は、主観や社会的理解に重要な基盤となると提言している。これは、自他同価に基づき、第一人称的情報と第三者的情報間の機能的架け橋になることで、類推的推論を可能にし、他者理解の可能性が生じると考えられるからである。
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