共進化モデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/28 17:27 UTC 版)
「アングレカム・セスキペダレ」の記事における「共進化モデル」の解説
このランは、特にダーウィンとの関連で、生物学分野でよく知られている。ダーウィンは、1862年1月にセスキペダレの花を入手し、その非常に長い距(20-35cm)に着目した。ダーウィンは、1862年の著書『蘭の受粉』の中で、「距の奥の蜜腺まで届くほど長い口吻を持った送粉者のガが自然選択されている」と推察した。 ダーウィンが直径 2.5mmのシリンダーをセスキペダレの花に押し込む実験を行ったところ、シリンダーを引き抜くときに花粉塊が付着してくることが確認された。彼は、ガが距の奥の花蜜を取ろうとして、その頭部や体に花粉塊を付けられると推測した。そのガが訪れた次のランは、同様の理由で受粉が起きる。 『蘭の受粉』発表後しばらくの間、異常に長い口吻を持つ送粉者の概念は嘲笑され、そのようなガが存在するとは一般には信じられなかった。ジョージ・キャンベルは、1867年の著作 The Reign of Law の中で「予測されたガの複雑さは超自然な存在によって作られたことを意味する」と批判した。これに対して、ウォレスは、同年の Creation by Lawの中で、ダーウィンの自然選択説を擁護し、セスキペダレとその送粉者のガの仮説についても支持を表明した。 この論争は、ダーウィンの死後、1903年に、ウォルター・ロスチャイルドとカール・ジョーダンによって、ダーウィンの予測に当てはまるガがマダガスカルで発見されたことで決着した。そのガはキサントパンスズメガ(Xanthopan morganii praedicta)と名付けられた。亜種名praedictaはダーウィンが存在を予測(predict)していたことに敬意を表して献名されたものであったが、後にアフリカ大陸の生物種と同じであるとして亜種名は使われなくなっている。 ダーウィンがセスキペダレとその送粉者の進化について行った考察には、後に「共進化」と呼ばれる概念が含まれていた。「あるガが長い口吻を持って、長い距をもつランから花蜜を吸えるとすれば、口吻が短いガより有利である。しかし、ある程度以上に口吻が長いと、ガは送粉者ではなく盗蜜者となってしまう。植物側としては送粉が必要であるから、それらのガでも送粉が行われるように更に長い距を持つような選択圧がかかる。以上の過程で、両者ともに口吻・距が長くなる選択圧が働く進化が起こった」という概念であった。この共進化モデルによって、セスキペダレとキサントパンスズメガの進化が起こったのだとすれば、距と口吻の長さは進化に伴って連続的な変化をしてきたことになる。
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