共振損失、出力結合光、共振周波数、スペクトル線形状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 08:13 UTC 版)
「ファブリ・ペロー干渉計」の記事における「共振損失、出力結合光、共振周波数、スペクトル線形状」の解説
ファブリ・ペロー共振器のスペクトル応答は入射光と共振器内で反射を繰り返す光との干渉に基いている。これら二つの光の位相が一致した場合、強めあう干渉が起こり、共振器内の光は増強される。位相が一致していない場合、共振器内に蓄えられるのは入射光の一部のみである。この結果、透過光は入射光に比べてスペクトルが変化している。 幾何学的な距離 ℓ をおいて対向する二枚の鏡の間に、屈折率 n の均一な媒質が満たされているファブリ・ペロー共振器に光が直角に入射するものとする。共振器内の往復時間を tRT、真空中の光速を c0、媒質中の光速を c = c0/n とすると、自由スペクトル領域 ΔνFSR は以下のように求められる。 t RT = 1 Δ ν FSR = 2 ℓ c {\displaystyle t_{\text{RT}}={\frac {1}{\Delta \nu _{\text{FSR}}}}={\frac {2\ell }{c}}} 鏡 i における振幅反射率 ri および強度反射率 Ri の間には以下の関係式が成り立つ。 r i 2 = R i {\displaystyle r_{i}^{2}=R_{i}} その他の共振損失はないものとすると、共振器内における光子の減衰時定数 τc は次のように与えられる。 1 τ c = − ln ( R 1 R 2 ) t R T {\displaystyle {\frac {1}{\tau _{\mathrm {c} }}}={\frac {-\ln {(R_{1}R_{2})}}{t_{RT}}}} 片道分の位相シフト量を ϕ(ν) とすると、周波数 ν の光において往復時間 tRT 中に蓄積する位相シフト量について次が成り立つ。 2 ϕ ( ν ) = 2 π ν t R T . {\displaystyle 2\phi (\nu )=2\pi \nu t_{RT}.} 共鳴は一往復後の光が強め合う干渉を示す場合に起こる。共鳴モードの指数を正負の整数 q とすると、対応する共鳴周波数 νq および共鳴波数kq について次が成り立つ。 ν q = q Δ ν FSR ⇒ k q = 2 π q Δ ν FSR c {\displaystyle \nu _{q}=q\Delta \nu _{\text{FSR}}\Rightarrow k_{q}={\frac {2\pi q\Delta \nu _{\text{FSR}}}{c}}} 符号の反転したモード ± q {\displaystyle \pm q} および ± k {\displaystyle \pm k} は、周波数の絶対値 |νq| は同じであるが、光の進行方向が逆であることを示す。 周波数 νq の入射振幅を Eq, s とすると、減衰時定数 τc での減衰はフェーザ表示を用いて次のように表わされる E q ( t ) = E q , s e i 2 π ν q t e − t 2 τ c {\displaystyle E_{q}(t)=E_{q,\mathrm {s} }e^{i2\pi \nu _{q}t}e^{-{\frac {t}{2\tau _{c}}}}} この電場振幅をフーリエ変換すると、周波数領域における振幅が次のように得られる。 E ~ q ( ν ) = ∫ − ∞ + ∞ E q ( t ) e − i 2 π ν t d t = E q , s 1 ( 2 τ c ) − 1 + i 2 π ( ν − ν q ) {\displaystyle {\tilde {E}}_{q}(\nu )=\int _{-\infty }^{+\infty }E_{q}(t)e^{-i2\pi \nu t}\,dt=E_{q,s}{\frac {1}{(2\tau _{c})^{-1}+i2\pi (\nu -\nu _{q})}}} これを規格化して周波数積分が 1 となるように変換すると、次を得る。 γ ~ q ( ν ) = 1 τ c | E ~ q ( ν ) E q , s | 2 = 1 τ c 1 ( 2 τ c ) − 2 + 4 π 2 ( ν − ν q ) 2 , {\displaystyle {\tilde {\gamma }}_{q}(\nu )={\frac {1}{\tau _{c}}}\left|{\frac {{\tilde {E}}_{q}(\nu )}{E_{q,\mathrm {s} }}}\right|^{2}={\frac {1}{\tau _{c}}}{\frac {1}{(2\tau _{c})^{-2}+4\pi ^{2}(\nu -\nu _{q})^{2}}},} ローレンツィアンスペクトル形状の半値全幅 (FWHM) Δνc を用いると、以下のように書き直せる。 Δ ν c = 1 2 π τ c ⇒ γ ~ q ( ν ) = 1 π Δ ν c / 2 ( Δ ν c / 2 ) 2 + ( ν − ν q ) 2 {\displaystyle \Delta \nu _{c}={\frac {1}{2\pi \tau _{c}}}\Rightarrow {\tilde {\gamma }}_{q}(\nu )={\frac {1}{\pi }}{\frac {\Delta \nu _{c}/2}{(\Delta \nu _{c}/2)^{2}+(\nu -\nu _{q})^{2}}}} ピーク高を 1 となるように規格化すると、次のローレンツィアン線を得る。 γ q , L ( ν ) = π 2 Δ ν c γ ~ q ( ν ) = ( Δ ν c / 2 ) 2 ( Δ ν c / 2 ) 2 + 4 ( ν − ν q ) 2 . {\displaystyle \gamma _{q,\mathrm {L} }(\nu )={\frac {\pi }{2}}\Delta \nu _{c}{\tilde {\gamma }}_{q}(\nu )={\frac {(\Delta \nu _{c}/2)^{2}}{(\Delta \nu _{c}/2)^{2}+4(\nu -\nu _{q})^{2}}}.} 全ての q について上記のフーリエ変換を行えば、共振器の完全なモードスペクトルが得られる。 線幅 Δνc と自由スペクトル領域 ΔνFSR は周波数に依存しないことから、波長空間では線幅が適切に定義できず、自由スペクトル領域は波長に依存してしまうことから、ファブリ・ペロー共振器の解析は周波数空間で行うのが自然である。
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