倫理学以外の分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 09:37 UTC 版)
生物学者の分析 倫理学者ではないが、生物学者マーク・ハウザーはネット上でこれに類する30以上の質問を行い、何故そのような判断を行ったかの理由を聞いた。回答した500人の内3割ほどしか自分の判断を正当化できなかった(質問と他の質問との違いを正しく認識し、それが自分の判断の基礎となっていることを示せた場合に「正当化に成功した」と判断された)。また5000人以上が回答したテストでは、最初の質問に対して89%の人が「許される」と答えたのに対して、2番目の質問に「許される」と回答したのは11%であった。3番目の質問には56%が「許される」と答え、4番目の質問は72%が「許される」と答えた。この傾向には教育の程度、宗教的背景、民族などの影響がほとんどなかった。 意図的な行動の結果の害には責任を問われ、ただ単にその結果が予見されたに過ぎないときには責任を問われないことをダブルエフェクトと呼ぶ。1と4を許されると回答している人の割合が大きいのは、直観的に人がダブルエフェクトを考慮していることで説明できるかも知れない。ハウザーの主張は、人の道徳的判断は理性と理論よりも、直観と感情の影響を受けていると言うことである。そしてどのような要因が非道徳的と判断されるのかを次の3つにまとめた。 行動の原理:行動による害(例えば誰かが死ぬような出来事)は行動しなかったことによる危害よりも、非道徳的だと判断される 意図の原理:意図を持ってとった行動は、意図を持たずにとった行動よりも非道徳的だと判断される 接触の原理:肉体的な接触を伴う危害は、肉体的な接触のない危害よりも非道徳的だと判断される 神経学者の分析 神経哲学者ジョシュア・グリーンによれば、特に2番目の質問では他の質問と異なる脳の部位が反応する。人を直接死に追いやるとき、強く否定的な反応を示すようである。 タイム誌の分析 米Time誌の記事によれば調査対象の約90パーセントが5人を救うために1人を突き落とすとした、とのことである。
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