使用された材木と技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/07/19 13:51 UTC 版)
画家たちが使用する板は、自身が居住していた場所の樹木から切り出したものが多かった。デューラー(1471年 - 1528年)はヴェネツィア在住時はポプラを、ネーデルランド、南ドイツ在住時にはオークを使用した。レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年 - 1519年)はフランス在住時にはオークを使用し、ハンス・バルドゥング(1484/1485年 - 1545年)、ハンス・ホルバイン(1497/1498年 - 1543年)は、南ドイツ、イングランド在住時にはオークを使用している。中世では、スプルースやシナノキの樹木の板がライン川上流域やバヴァリアで使用されている。ラインラント以外の地域ではマツのような比較的柔らかい樹木が主に使われていた。ノルウェーにあるゴシック期に制作された20枚の祭壇画は、14枚がモミ、2枚がオーク、4枚がマツである。14世紀にデンマークで制作された大きな祭壇画の絵が描かれた翼部分と、肖像彫刻部分はどちらもオークが使用されている。シナノキはデューラー、バルドゥング、アルブレヒト・アルトドルファー、ルーカス・クラナッハなどの画家がよく使用した。クラナッハはブナを使うこともあったが、他の画家でブナを使用している例はあまりない。 北ヨーロッパではポプラはほとんどみられず、クルミやクリが多くみられる。最北ヨーロッパや南ヨーロッパではスプルース、モミ、マツなどの針葉樹が使用されていた。モミはライン川中下流域、アウクスブルク、ニュルンベルク、ザクセンといった地域で使われ、マツは主にチロルで使われている。 このようにさまざまな樹木が板絵の支持体とされたが、ネーデルラント、北ドイツ、ラインランドなどで作成されたオークが一般的にはよく使用された。フランスでも17世紀までオークの板が主として使用されており、クルミ、ポプラはほとんど使用されていない。オークは北方絵画の画家たちが好んで使っていたが、必ずしもその土地で産出したオークが使われていたわけではない。17世紀では中型商船を作るためには約4,000本のオークの成木が必要であり、オークの輸入が行われていた。ケーニヒスベルクやグダニスクから輸入されたオークが、15世紀から17世紀のフランドルやドイツの画家たちの作品に使用されている。17世紀終わりにドイツ人著述家ヴィルヘルム・ブールスが絵画技法について書いた著書のなかで、オークが板絵に最も適した素材であると記している。しかしながら、17世紀前半でもクルミ、ナシ、スギなども板絵に使用されていた。マホガニーも17世紀前半には多くの画家たちに使われ、19世紀のネーデルラントでも使用されている。北方絵画の画家たちの作品のほとんどすべてはキャンバスや銅板ではなく、オークの板に描かれている。
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