他感作用とは? わかりやすく解説

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たかん‐さよう【他感作用】

読み方:たかんさよう

ある植物の出す物質が、他の植物微生物などの生育促進または阻害すること。セイタカアワダチソウ根から化学物質分泌し、他の植物排除するなどの例がある。遠隔作用アレロパシー


アレロパシー

(他感作用 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/26 01:17 UTC 版)

アレロパシー英語: Allelopathy)とは、ある植物が他の植物の成長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称。邦訳では「他感作用」という。ギリシア語αλληλων(allēlōn 互いに)+παθος(pathos 感受。あるものに降りかかるもの)からなる合成語である。1937年ドイツ植物学者であるハンス・モーリッシュにより提唱された[1]

作用経路

いくつかの作用経路を経て、他の植物に影響を与える[1]

  1. 葉から、雨・露などの水分接触で滲出する(Leaching)[1]
  2. 代謝産物が揮発性物質として放出される(Volatilisation)[1]
  3. 植物体の残渣が蓄積する(例えば、桜の葉の落葉後に分解生成されるクマリンや、そのほかの残根、ちぎれた根など)[1]
  4. 根から滲出する( exudation )[1]

識別手法

アレロパシーがあるかどうかの試験には、いくつのかの方法がある[1]

付加栽培法[1]
置換栽培法[1]
階段栽培法
階段状にポッドを並べ、日当たりや養分の競合をなくし、2種類の植物を交互に接続して影響を調べる[1]
無影日長栽培法[2]
連続的根滲出液捕集法
連続的根滲出液捕集法 (CRETS, Continuous Root Exudate Trapping System)とは、根から放出される物質を吸着する樹脂によって収集する。階段栽培法と組み合わせて判別する[1]

アレロパシーを有する植物の例

アレロパシーは、連作障害の原因の1つと考えられている。セイタカアワダチソウなどの帰化植物が勢力を拡大する要因の1つでもある。また、特定の植物により雑草害虫防除する生物農薬としての利用が注目されている。

藻類の例

フロロタンニン英語版を生産する藻類は、摂食阻害、着生生物の付着抑制、紫外線に対する生体防御などの役割がある[4][5]。そのほかにも、競争相手の藻類の成長阻害など様々なアレロパシー効果を持つ物質が様々な大型藻類などから確認されている[6][7]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k 義晴, 藤井「4. 植物のアレロパシー」『化学と生物』第28巻第7号、1990年、471-478頁、doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.28.4712022年7月18日閲覧 
  2. ^ 藤井義晴『アレロパシー検定法の確立と作用物質の機能』 京都大学〈農学博士 乙第7890号〉、1992年。doi:10.11501/3061475NAID 500000086827https://doi.org/10.11501/3061475 
  3. ^ 鄭紹輝, 田中利依, 有馬進「ヘアリーベッチのアレロパシーによる雑草抑制効果」『Coastal bioenvironment』第7巻、佐賀大学海浜台地生物環境研究センター、2006年、9-14頁、ISSN 13487175NAID 110004735066 
  4. ^ 海洋生物学研究室”. www.s.fpu.ac.jp. 2024年6月22日閲覧。
  5. ^ 谷口 和也, 蔵多 一哉, 鈴木 稔 (1992). “コンブ科褐藻数種のエゾアワビに対する摂食阻害活性” (英語). 日本水産学会誌 58 (3): 577–581. doi:10.2331/suisan.58.577. ISSN 1349-998X. http://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/58/3/58_3_577/_article/-char/ja/. 
  6. ^ Budzałek, Gracjana; Śliwińska-Wilczewska, Sylwia; Wiśniewska, Kinga; Wochna, Agnieszka; Bubak, Iwona; Latała, Adam; Wiktor, Józef Maria (2021-07-23). “Macroalgal Defense against Competitors and Herbivores” (英語). International Journal of Molecular Sciences 22 (15): 7865. doi:10.3390/ijms22157865. ISSN 1422-0067. PMC 8346039. PMID 34360628. https://www.mdpi.com/1422-0067/22/15/7865. 
  7. ^ 鈴木 稔・沖野 龍文 (2002) アレロパシー現象 (pdf). 21世紀初頭の藻学の現況.

関連資料

  • 『アレロパシー―多感物質の作用と利用』(藤井義晴農山漁村文化協会、2000年、ISBN 4540922254
  • 『化学で勝負する生物たち―アレロパシーの世界〈1〉』(今村寿明、裳華房、1994年、ISBN 478538591X
  • 『化学で勝負する生物たち―アレロパシーの世界〈2〉』(今村寿明、裳華房、1994年、ISBN 4785385928
  • 『植物たちの静かな戦い―化学物質があやつる生存競争(DOJIN選書71)』(藤井義晴、化学同人、2016年、ISBN 4759816712
  • 『里山と校庭の樹木落葉のアレロパシー』(佐藤大地、高橋和成、Naturalistae 14: 1-7 2009年)

関連項目

  • コンパニオンプランツ混作英語版
  • フィトンチッド
  • パイロファイト(英語:pyrophyte) - 火+性質を持つ植物の意で、森林火災に耐えやすい、もしくは周囲を燃えやすい状態にして森林火災で周囲が燃えた後に発芽・根から再生する仕組みを持つ植物群。他の火に弱い植物群を妨害し、火に強いパイロファイトが増える環境を作る。
  • カイロモン英語版 - 他の種に有利になる情報を与えるフェロモン。
  • アロモン (フェロモン)英語版 - 他の種に情報を与えて生産者に有利になるフェロモン。

外部リンク


他感作用

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 22:50 UTC 版)

ツルヒヨドリ」の記事における「他感作用」の解説

本種の新芽が他感作用に関わる物質分泌していることは実験示されている。それは他種植物の再生成長抑制する働きがある。これに関わる物質3種分離されている。それと別にセスキテルペノイド化合物3種、本種の気中の部分から分離されている。この成分は数種の作物に対してその発芽抑制し、また芽生え成長抑える作用があることが確かめられている。また、その抽出液が土壌窒素過多引き起こし、また土壌pH下げ働きがあり、それらは本種がその地で繁茂するのを加速するものとなっている。

※この「他感作用」の解説は、「ツルヒヨドリ」の解説の一部です。
「他感作用」を含む「ツルヒヨドリ」の記事については、「ツルヒヨドリ」の概要を参照ください。

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